2002/1/26
千葉国際クロスカントリー
福士vs.山中の“絶好調対決”は福士に凱歌

福士は“ちょんまげラストラン”


貴重な、“ちょんまげラストショット”

 シニア女子8000mは、藤永佳子(筑波大)が足首の故障(スキー実習中に捻ったとのこと)で欠場し、福士加代子(ワコール)との“同学年FF対決”は実現しなかったが、当初の招待選手リストに名前がなかった山中美和子(ダイハツ)が参戦。
 山中は2週間前の全国女子駅伝1区で、渋井陽子(三井住友海上)を破って区間賞と絶好調。福士は同駅伝9区区間賞。この冬のロードシーズンで絶好調同士の2人の直接対決が実現した。

 いきなりのアクシデントに観衆がハッとさせられたのは、2300m付近の丸太越え。福士が足をどこかに引っかけて転倒したのだ。
「“あーっ、やってしまった”と思いました。障害が苦手なんで、昨日もコースを下見しましたし、友人のハードラーの方からアドバイスももらっていたんですが、実践できず残念です。とにかく跳んだりはねたりがダメ。馬跳びはできますが、跳び箱とかダメですね。5段までしか跳べません。走幅跳ですか。3m03がベストです」
 いくらなんでも3mということはないだろうと「4mでは?」と確認すると、「えーっ、4mですかね?」と、自信なさげな反応。しかし、横にいた山中から「私も3m(台)です。長距離の女子はだいたい、そんなもんですよ」とのフォローがあった。<注参照>

 レースは3000m過ぎでワンジル(日立)が遅れると、山中、福士、ウイリス(豪)の3人に。最近のレースぶりと同じで、山中が終始レースを引っ張っている。福士は「付いていきなさいという指令」が出ていたこともあり、最近のレースでは珍しく、先頭に立とうとしない。10〜20m後方では市川良子(東京陸協)が、3人との差を詰めそうでいて詰められない。
 市川までの4人が、テレビ画面に映し出される。ふと、あることに気づいた。市川とウイリスはシドニー五輪経験選手。山中も、96年の世界ジュニア選手権でシドニーのトラックを走っている。福士だけが“シドニー経験”がない仲間外れ状況だった。そんなことが実際の走りで、福士だけが後れ出すことの理由になるはずもないのだが。

 ウイリスが初めて山中の前に出たのが6500m付近。つられるように、福士も初めて山中の前に出た。山中も粘りを見せたが、7000mを過ぎて徐々に遅れだしてしまった。7400mあたりから、福士もウイリスについていけなくなった。
 フィニッシュではウイリスから5秒差と、離され始めてからの距離を考えると、福士はそれなりに粘った。山中は福士から11秒差。ちょっと最後に課題を残した。4位・市川は山中から14秒差と、福士同様離れてからの距離を考えると粘ったと評価できそうだ。

福士加代子の会場のファンへの挨拶
「今日は丸太越えがすごくいい経験になりました。ちょっと転びましたが、いい結果で終わることができ、応援の方たちにすごく助けられたと思います。(ちょんまげは?のアナウンサーの問いに)今日で終わると思います」

記者団との一問一答
Q.今日の感想は?
福士 丸太越えで見事に引っかかって、楽しかったです。初めてのクロカンで、初めて転けて、インターハイの予選以来ですね。昨日練習したんですが、丸太は怖かったですね。面白かったですけど、丸太はもういいです。
Q.リズムが崩れるようなことは?
福士 大丈夫でした。踏まれることもなく、すぐに立ち上がれましたし。ちょっと左ヒザを(すりむいた)くらいです。
Q.ちょんまげは本当に最後?
福士 切ります。(この長さだと)邪魔でしょうがありません。成人式が終わって切ろうと思ったのですが、成人式のあと合宿があって、京都にいなかったものですから。
Q.いつ、切る予定?
福士 2月中には。たぶん。
Q.今年の目標は?
福士 目標は、特にはないですね。
Q.5000mで14分台とか?
福士 出たらいいですね。
Q.選ばれたら世界クロカンは?
福士 行きたいと思っています。

<注>
 2人が口を揃えるのだから、彼女たちの走幅跳の記録が「3m台」というのは確かだろう。だが、要はコツを掴めていないだけなのではないか。いくら長距離でも、あれだけのスピードを出せる脚力の選手が、走幅跳選手の半分の3m台であるはずがない。
 かつて、こんなことがあった。アトランタ五輪代表が決定した際、選手たちが岸記念体育館で諸々の測定を行なっていた。そこからひょっこり出てきた伊東浩司が「背筋○○kg(110kgとか120kg。とにかく一般人以下の超低い数字)ですよ」と、漏らしたのだ。
 その後、何年かたって「今でも背筋○○kg」と聞いたら、「今は違います。あの頃はコツがわからなかったんです」との回答。
 たぶん、女子長距離選手も、脚筋力がないのではなく、どういった助走の仕方をして、どういった踏み切りをするのかがわからない選手がいるのではないか。立ち幅跳とか垂直跳びの数字は、いくらなんでも跳躍選手の半分ということはないはずだ。