日本選手権2013・日付毎展望
第3日(6月9日)編

◆男子走高跳 全種目エントリーリスト
 和歌山優勝(2m20)の高張広海(→)と同記録2位の戸邊直人(→)の争いか。誰も2m20台後半を跳べない状況が続いているが、高張が昨年5月から国内選手に負けていない。冬期に助走を変更し、跳躍が横に流れず、バーの向こう側に抜けるようにしている。戸邊は3年前の世界ジュニア銅メダリスト。飯塚翔太、ディーン元気ら同学年選手に続きたい。昨年2m23で日本リスト1位の富山拓矢(↓)、2m24がベストの衛藤昴(↓)、水戸で優勝した尾又平朗(↑)と人材がいないわけではない。誰かが2m25を越えれば活性化するはずだ。
=陸上競技マガジン6月号記事。以下同
■モスクワ世界陸上標準記録 2.31/2.28
■突破者 なし
 大会前の今季日本リストは以下の通り。衛藤昴が関東インカレ3部で2m26を跳んでリスト1位に、戸邊直人が前日の関東インカレ1部で2m25を跳んで同2位に。高張広海は東日本実業団で2m18だったが、アジアグランプリ転戦から帰国直後でコンディションが良くなかった。この3人は、予想段階としては横一線と見ていいだろう。誰が抜け出すか。
 土屋光も東日本実業団で2m15と復調してきた。
 期待優勝記録はA標準としたが、最低でもB標準の2m28は跳んでもらいたい。
1)2.26 衛藤 昂 91 (筑波大 M1三重)1 5.19 国 立 関東学生
2)2.25 戸辺 直人 92 (筑波大 4千葉)1 5.18 国 立 関東学生
3)2.22 高張 広海 87 (日立ICT・神奈)3 3.13 シドニー オーストラリア選手権
4)2.18 江戸 祥彦 83 (山本ビル・北海)7 4.20 ウォルナット マウントサックリレー
4)2.18 元吉 雄基 92 (東海大 3東京)1 5.04 東海大 東海大競技会(第1回)
6)2.16 尾又 平朗 89 (ABジャパン・千葉)1OP 4.13 東海大 東海大・日大対校
6)2.16 佐藤 凌 94Jr(東海大 1新潟)2 5.18 国 立 関東学生
6)2.16 高山 豊 91 (順 大 4群馬)3 5.18 国 立 関東学生
9)2.15 中島 大輔..95Jr(佐野日大高 3栃木)1 4.14 宇都宮 栃木県春季
9)2.15 岡山 優樹 90 (奈良陸協 ・奈良)1 5.04 鴻ノ池 奈良県選手権
9)2.15 富山 拓矢 85 (鶴学園ク ・広島)2 5.04 水 戸 水戸招待
9)2.15 土屋 光 86 (モンテローザ・東京)2 5.19 笠 松 東日本実業団


●女子ハンマー投 全種目エントリーリスト
 綾真澄(→)の8回目の優勝は確実。和歌山では1投目に優勝記録となった63m43を投げたが、2投目以降は記録を伸ばせなかった。だが、冬期練習では4.5kgのハンマーで「一番距離が出ていた。今まで以上の可能性がある」と手応えを感じている。今季から日本記録保持者の室伏由佳と対決できないが、「日本記録を狙っていくのは変わりありません。由佳さんがいない分、自分でモチベーションを上げていく」。2位争いは和歌山で59m70の学生歴代3位を投げた渡邊茜(↑)、昨年60m25と大台を突破した武川美香(→)らが候補。
■モスクワ世界陸上標準記録 72.00/69.50
■突破者 なし
 綾真澄が関西実業団で65m03と記録を伸ばした。期待優勝記録はB標準だが、日本記録更新の可能性が高くなってきた。
 社会人ルーキーの知念も九州実業団で58m49と調子を上げてきた。2位争いも激しくなりそう。
1)65.03 綾 真澄 80 (丸善工業 ・香川)1 5.18 尼 崎 関西実業団
2)59.70 渡辺 茜 91 (九州共立大 4福岡)2 4.28 紀三井寺 日本選抜和歌山大会
3)58.99 武川 美香 85 (スズキ浜松A・静岡)1 4.20 中京大 中京大土曜競技会(第1回)
4)58.49 知念 春乃 90 (日本体育施設・福岡)1 5.19 鞘ケ谷 九州実業団
5)58.10 勝山 眸美 94Jr(筑波大 1埼玉)1 4.13 筑波大 筑波大競技会(第2回)
6)57.26 野田 奈央 85 (星城大リハ教・愛知)1 5.25 大体大 大体大競技会(第2回)
7)56.78 浅田 鈴佳 87 (武庫川女大職・大阪)1 4.06 鴻ノ池 奈良県強化・普及記録会(第1回) 8)56.23 佐藤 若菜 88 (船岡支援学教・宮城)1 5.18 笠 松 東日本実業団
9)56.21 居川 汐里 94Jr(四国大 1徳島)1 5.17 春 野 中国四国学生
10)55.35 福島美沙希 93 (九州共立大 2広島)2 5.12 沖 縄 九州学生



◆男子三段跳 全種目エントリーリスト
 岡部優真(→)が2連勝に向けて順調だ。織田記念に16m30(+1.5)で2連勝し、2位の梶川洋平(→)に28cm差をつけた。昨年の岡部は16m48〜16m54を4回マークし、パフォーマンスリストの上位4傑を占めた。助走スピードがあり「ステップのタメの動作は他の選手にも参考になる」(福岡大・片峯隆総監督)。B標準も期待できる選手である。織田記念3位の鈴木義啓(→)は3年前の優勝者。同4位の松下翔一(↓)は昨年の日本インカレで岡部に同記録で勝った選手。“岡部時代”に待ったをかけたい。
■モスクワ世界陸上標準記録 17.20/16.85
■突破者 なし
 東日本実業団で角山貴之が16m40の今季日本最高。4年ぶりの自己新だった。100m元日本記録保持者の井上悟氏に走りのアドバイスを受け、助走が良くなったのが好記録の背景だという。
 岡部優真の評価は上記記事と変わらないが、“ストップ岡部”の有力候補に。梶川洋平も東日本実業団で16m29と調子を上げている。鈴木も思わぬところで力を発揮してくる。岡部独走となるかどうかは、やってみないとわからなくなってきた。

1)16.40 1.7 角山 貴之 85 (モンテローザ・東京)1 5.18 笠 松 東日本実業団
2)16.30 1.5 岡部 優真 90 (九電工 ・福岡)1 4.29 広島広域 織田幹雄記念国際
3)16.26 1.9 梶川 洋平 83 (阪神酒造 ・東京)2 5.18 笠 松 東日本実業団
4)16.00 1.6 鈴木 義啓 86 (スズキ浜松A・静岡)1 4.21 浜 松 静岡県西部地区選手権
5)15.92 -0.6 松田 晋治 88 (京田辺市消防・京都)1 5.05 鴻ノ池 奈良県選手権
5)15.92 0.8 米沢 宏明 93 (筑波大 3京都)1 5.19 国 立 関東学生
7)15.82 1.6 松下 翔一 89 (筑波大 M2兵庫)4 4.29 広島広域 織田幹雄記念国際
8)15.78 1.5 稲葉 広幸 82 (大井町役場 ・神奈)4 5.18 笠 松 東日本実業団
9)15.76 0.7 佐脇 匠 91 (愛教大 4岐阜)1* 5.19 瑞 穂 東海学生
9)15.76 0.3 阿比留明久 93 (福岡大 2福岡)2 6.01 福岡大 九州学生競技会(第2回)
<追参>
16.11 2.1 笠松 諒 86 (ニューモード・東京)3 5.18 笠 松 東日本実業団
15.97 2.2 長谷川大悟 90 (日立ICT ・神奈)1 4.07 東海大 東海大種目別競技会(第1回)


◆男子砲丸投 全種目エントリーリスト
 兵庫でニューフェースが現れた。畑瀬聡(→)が最終投てきで17m79を投げて逆転V。前日本記録保持者の意地を見せた。その直前に17m77を投げた山元隼(↑)が注目の若手。昨年までの自己記録を85cmも更新した。「ファーストターンを力まず入り、セカンドターンの脚をつくタイミングが固まりつつあります」。一方の畑瀬も「今年はなんとしても日本記録を出したい」と意欲を見せる。村川洋平(↓)は教員になって間もないこともあり、兵庫は16m80にとどまった。試合に出ていない日本記録保持者の山田壮太郎(↓)も日本選手権には間に合わせる。
■モスクワ世界陸上標準記録 20.60/20.10
■突破者 なし
 山元隼が東海インカレで17m88と記録を伸ばした。勢いは完全にベテラン勢を上回る。大舞台で力を発揮できるか。日本選手権に強い村川洋平、復帰を目指す日本記録保持者の山田壮太郎が、どこまで投げてくるか。
1)17.88 山元 隼 91 (中京大 4岐阜)1 5.19 瑞 穂 東海学生
2)17.79 畑瀬 聡 82 (綜合ガードS・群馬)1 4.21 神戸 兵庫リレーカーニバル
3)17.19 宮内 育大 90 (日 大 4高知)3 4.21 神 戸 兵庫リレーカーニバル
4)16.87 鈴木 孝尚 86 (和歌山陸協 ・和歌)4 4.21 神 戸 兵庫リレーカーニバル
5)16.80 村川 洋平 81 (大阪陸協 ・大阪)5 4.21 神 戸 兵庫リレー


◆男子ハンマー投 全種目エントリーリスト
 室伏広治(?)が最多連勝記録を19に伸ばすだろう。2位も静岡国際日本人1位(69m22)の野口裕史(→)で間違いなさそう。冬期は「リラックスする投げの感覚をつかむ」ため、3kgや4kgの軽いハンマーで投げ込んだ。中止となった4月の大川杯の頃は試合用の7kgにも応用できたが、5月に入って崩れてしまった。「左脚に乗れるようになれば、72mよりも行く。広治さんにオッと思わせる記録を投げたい」。3位は静岡で67m89の土井宏昭(↓)が有力。4月に64m38を投げている柏村亮太(→)が、野口&土井の一角を崩すまでに成長するか?
■モスクワ世界陸上標準記録 79.00/76.00
■突破者 なし
 野口が東日本実業団で69m26。日本選手権では71〜72mまで行くだろう。柏村と遠藤の学生勢が、土井に勝って表彰台に上れるかどうか。
1)69.26 野口 裕史 83 (綜合ガードS・群馬)1 5.19 笠 松 東日本実業団
2)67.89 土井 宏昭 78 (流通経大職 ・茨城)5 5.03 袋 井 静岡国際
3)66.54 柏村 亮太 91 (日 大 4鳥取)1 5.19 日 大 関東学生
4)65.78 遠藤 克弥 91 (中京大 4石川)1 5.18 瑞穂北 東海学生
5)64.74 田中 透 86 (岐阜県体協 ・岐阜)1 4.13 長良川 岐阜県春季記録会(岐阜会場) 5)64.74 赤穂 弘樹 90 (鳥取県教委 ・鳥取)6 5.03 袋 井 静岡国際



●女子走高跳
 福本幸(B↑)の優勝は確実で、記録が焦点になる。4月にオーストラリアでB標準の1m92に成功。9年ぶりの自己タイだったが、軟らかめのトラックで、決して記録が出やすい環境ではなかった。国内で記録更新も期待できる状態だったが、兵庫(一般種目)1m85、静岡1m82、GG1m84とくすぶってしまっている。コンディションに恵まれ、日本選手権では10年ぶりに1m90以上の記録となることを期待したい。2位争いは静岡2位の三村有希(→)が有力。上島みどり(?)はGGを欠場した。2位も1m80以上を期待したい。
■モスクワ世界陸上標準記録 1.95/1.92
■突破者 1人
福本 幸 1.92 2013/4/14 オーストラリア選手権
 試合会場に向かう福本幸が自己記録更新に意欲を見せていた。


1) 1.92 福本 幸 77 (甲南大職 ・兵庫)1 3.14 シドニー オーストラリア選手権
2) 1.80 三村 有希 88 (チームミズノ・大阪)1c2 4.14 長居第二 大阪府記録会(第2回)
3) 1.76 京谷 萌子 91 (北教岩見沢大4北海)1 5.17 円 山 北海道学生
3) 1.76 井上 七海 91 (東学大 4東京)1 5.26 横浜国際 関東学生
5)i1.74 上島みどり 94Jr(花園高 3+京都)1 2.03 大阪城 日本ジュニア室内大阪大会
6) 1.73 松井 紗希 96Jr(中京大中京高2愛知)1 5.03 瑞 穂 愛知県高校名古屋南支部予選会6) 1.73 今城 瞳 87 (都大森高教 ・東京)1 5.18 笠 松 東日本実業団
6) 1.73 川口あゆ美 87 (竜ケ崎一高教・茨城)2 5.18 笠 松 東日本実業団
6) 1.73 相馬 由佳 93 (愛教大 2新潟)1 5.19 瑞 穂 東海学生
6) 1.73 辻 愛 95Jr(添上高 3奈良)1 5.31 鴻ノ池 奈良県高校



◆男子1500m 全種目エントリーリスト
 秋本優紀(↑)がV候補筆頭に躍り出た。金栗記念選抜中長距離熊本大会(以下熊本)で日本人1位。佐藤悠基に0.22秒競り勝って勝負強さを見せると、カージナル招待では3分42秒79の今季日本最高をマークした。兵庫リレーカーニバル(以下兵庫)では油布郁人(↑)が日本人1位。他の選手が牽制するなか、デンマ(カネボウ)を追って1人抜け出した。最後は追い込まれたが日本人1位を譲らなかった。低迷する種目の起爆剤となる存在。勝負強さでは3年前の優勝者の村上康則(↓)、前回優勝の田中佳祐(↓)の富士通コンビも侮れない。
■モスクワ世界陸上標準記録 3.35.00/3.37.00
■突破者 なし
 大会前の時点での今季日本リスト上位は以下の通り。
1)3.42.79 秋本 優紀 92 (山陽特殊製鋼・兵庫)2rC 4.28 パロアルトカージナル招待
2)3.45.57 村上 康則 83 (富士通・千葉)2 5.18 笠 松 東日本実業団
3)3.46.32 戸田 雅稀 93 (東農大2群馬)1r8 4.28 鴻 巣 大東大長距離競技会(第40回)
4)3.46.73 佐藤 悠基 86 (日清食品G ・東京)3 5.18 笠 松 東日本実業団
5)3.47.21 菊池 敦郎 88 (NTN・三重)2r5 5.25 中京大 中京大土曜競技会(第2回)
 予選は1組が田中佳祐、田中秀幸の“ダブル田中”がワンツー。油布郁人、八木沢、安齋の学生トリオが3〜5位で着順通過した。2組は今崎俊樹が3分47秒61で1位通過。戸田、荒井、楠と続いた。
 優勝予想した秋本優紀は2組で5位だったが、周りを見回して順位を確認しながらのフィニッシュ。余裕はあった。香川・尽誠学園高出身の実業団3年目の選手。高校時代は3分56台がベストでインターハイも予選落ちだった。山陽特殊製鋼に進んで1年目は3分51秒台だったが、2年目の昨年3分45秒77をホクレン士別大会でマーク。今年に入って上記記事のように日本の第一線に躍り出た。
 山陽特殊製鋼は練習で1200mを行うのが伝統。「1年目は3分8秒で1本が限界でしたが、今は3分5秒で3本くらいできる」ようになっている。その練習ができれば、試合で3分00秒で1200m通過をイメージできるという。それを現実としたのがカージナル招待で、1200mを3分00秒で通過して、最後の300 mを42秒で上がった。
「明日は、今持っている力を出して結果がついてくれば」と控えめな言い方をしたが、優勝を目標としているのは間違いなさそうだ。


●1500m 全種目エントリーリスト
 陣内綾子(→)の2連勝が濃厚。兵庫はコンディションが悪く記録は4分22秒87だったが、ムルギ(豊田自動織機)に快勝した。今の日本選手のなかでは1つ上の力を持っている。800 mは織田記念で4位。同じ日に決勝が行われるので1500mに絞る可能性が高い。昨年のジュニア選手権に800 mで優勝した中田美保(↑)が兵庫3位、昨年の日本インカレ2位の森智香子(→)が兵庫4位、日本学生個人選手権に優勝した万代美幸(↑)が兵庫5位。高校生では昨年の世界ジュニア11位の由水沙季(→)が出てくると面白い。
■モスクワ世界陸上標準記録 4.05.00/4.09.00
■突破者 なし
1)4.16.89 陣内 綾子 87 (九電工・福岡)1 5.18 鞘ケ谷 九州実業団
2)4.19.20 ト部 蘭 95Jr(白梅高3東京)1 5.12 駒 沢 東京都高校
3)4.20.73 森 智香子 92 (大東大3長崎)1 5.18 国 立 関東学生
4)4.21.09 中田 美保 95Jr(日体大 1兵庫)2 5.18 国 立 関東学生
5)4.21.78 福内 桜子 93 (大東大2福岡)3 5.18 国 立 関東学生
6)4.21.84 飯野 摩耶 88 (東農大2山梨)4 5.18 国 立 関東学生
7)4.22.79 足立 知世 96Jr(興譲館高3岡山)1 5.31 岡 山 岡山県高校
8)4.22.97 高橋 彩良 96Jr(興譲館高2岡山)2 5.31 岡 山 岡山県高校
9)4.23.27 須永 千尋 88 (資生堂 ・東京)1 5.18 笠 松 東日本実業団
10)4.23.45 出水田真紀 96Jr(白鵬女高3神奈)1 5.19 三ツ沢 神奈川県高校

 九州実業団で陣内綾子が今季日本最高。ただ、自己記録が4分20秒を切っている選手は8人いる。陣内はラストが切れるというよりも、押していく強さ。ベスト記録も4分11秒30と抜けている。確実に勝つならハイペースに持ち込むか、ロングスパートをかけるだろう。
2位争いが陣内を追う展開でなく、文字通りの2位争いになれば、勝負強い森がそれに勝つ可能性が高い。
 全日本実業団女子駅伝の最長区間を走ったこともある飯野摩耶がこの種目に出場するのも面白い。


◆男子400mH 全種目エントリーリスト
 2連勝中の岸本鷹幸(↓)がいまひとつで混戦模様。静岡が風の悪い4組だったこともあり49秒73にとどまった。風がよかった組の今関雄太(B↑)と笛木靖宏(B↑)が49秒4台。今関は「ハードル前のリズムアップ」を狙って1台目までの歩数を増やしたことが奏功している。昨年2位で五輪代表となった中村明彦(↓)は十種競技が本職。「前回ははまった結果。その再現をしたいが、できなかったらそれが力」と欲を出さずに臨む。舘野哲也(↓)、野澤啓佑(A↓)、安部孝駿(↓)ら学生勢が不調。勝負強い岸本と、代表復帰を狙う今関の争いか。
■モスクワ世界陸上標準記録 49.40/49.60
■突破者 4人
野澤啓祐 49.60 2012/10/6 岐阜国体
49.15 2012/10/14 実業団・学生対抗
今関雄太 49.42 2013/5/3 静岡国際
笛木靖宏 49.48 2013/5/3 静岡国際
49.38 2013/6/8 日本選手権準決勝1組
岸本鷹幸 49.49 2013/6/8 日本選手権準決勝1組
 準決勝1組で笛木靖宏がA標準を、岸本鷹幸がB標準を突破した。笛木は前半を飛ばした岸本に上手く付いて行き、6台目くらいでトップに。後半も押し切って49秒38をマークした。
 日刊スポーツ自然体の笛木、五輪代表抑え優勝の記事にもあるように、自身の理想の400mHを追求するのが笛木の競技スタンス。A標準突破で代表入りに大きく近づいたが、「世界選手権を考えると欲が出てしまいます。決勝も自分のレースを貫きます」
 標準記録が切れずに悩んでいた岸本も、B標準で気持ちが楽になった様子。練習が昨シーズンよりできていないため、今季は立て直しのシーズンと位置づけていた。代表入りができなかったらそれも仕方ない、という雰囲気だったが、これでスイッチが入るだろう。元々、日本選手権だからといってテンションを一気に上げるタイプではない。本人の意識のなかでは「昨年の日本選手権と高校3年時のインターハイ」が、気持ちが高まった2大会。しかし、それ以外の大会でも勝負強さを見せている。つまり、テンションを上げなくても、試合になれば精神的なピーキングができる。岸本を優勝予想したのは、そういう所を評価してのことである。
 準決勝2組では安部孝駿が49秒76で1位通過。B標準には届かなかったが、“動いている”という印象。静岡国際は51秒74だったがしっかりと上げてきた。その要因は、今季から取り入れている新歩数がはまり始めたからだという。
「14歩の区間を6、7、8、9台目と4区間に増やしたことが上手くいきました。15歩だと刻む感じが強くなって減速していました。そこをダイナミックに走りきろうと考えました」
 昨年までは7台目までだったが、2台伸ばした。静岡国際では8台目が逆脚になってしまって失敗したが、今大会では予選、準決勝としっかりとできている。
「決勝は1台目までをもう少しスムーズに入ることと、10台を越えてから混戦になると思うので、そこをしっかりと走ること」
 話を聞くことができなかったが、昨秋A標準を突破済みの野澤が2組2位。50秒09と49秒台は出していないが、決勝にしっかりと合わせている印象。ロンドン五輪代表だった中村明彦も1組3位で49秒77。混戦予想から、激戦予想に変わってきた。


●女子400 mH 全種目エントリーリスト
 この種目の単独最多となる6連勝を達成した久保倉里美(→)が、連勝を7に伸ばしそうだ。マウントサックで56秒76、静岡国際で56秒69。B標準を僅差で逃しているのは悔しいところだが、条件に恵まれればA標準も期待できそうだ。青木沙弥佳(↓)がマウントサック、静岡国際と58秒かかっている。三木汐莉(↓)はケガの影響で静岡が1分00秒67。期待の2人が日本選手権までにどう立て直してくるか。静岡では1組トップの杉山真菜穂(↑)が58秒03で全体2位。昨年までの自己記録を1秒以上更新した。注目の大学3年生が現れた。
■モスクワ世界陸上標準記録 55.40/56.55
■突破者 1人
久保倉里美 56.42 2013/5/18 上海ダイヤモンドリーグ
 試合前日に出場が決まったダイヤモンドリーグ上海大会に電撃的に遠征。B標準を突破してしまうのだから、さすが久保倉里美である。初日の予選でも2組で57秒55と、全体トップのタイムで通過した。大会前の今季リストは以下のようになっていた。
1)56.42 久保倉里美 82 (新潟アルビ新潟)9 5.18 上 海 上海グランプリ
2)57.60 吉良 愛美 91 (中 大 4熊本)1 5.26 横浜国際 関東学生
3)57.85 青木沙弥佳 86 (東邦銀行・福島)1 5.18 笠 松 東日本実業団
4)58.03 杉山真奈穂 92 (福岡大 3福岡)1r1 5.03 袋 井 静岡国際
5)58.93 西野 愛梨 92 (東学大 4東京)2 5.26 横浜国際 関東学生

 予選1組1位の青木沙弥佳と、2組2位の吉良愛美の2人が57秒8台。2人とも2時間後には400m予選を走った。久保倉が56秒台ならば2人にも可能性はある。もちろん、吉良が「目指しているのは55秒台」と言うように、2人とも目標はB標準よりも上である。吉良にとっては55秒99の中大記録を更新することにもなる。
 吉良は上背もあり15歩で5台目まで行ける。調子が良ければ、残りを16歩で押し通すが、最後が17歩になってしまうこともある。


◆男子800m 全種目エントリーリスト
 日本記録保持者の横田真人(↓)、川元奬(→)、口野武史(→)の三つ巴の戦いが予想される。横田は今季成績が低下することも覚悟で、アメリカに拠点を移してトレーニングを積んでいる。初戦が1分51秒54と低調だったが、4月20日のマウントサックでは1分48秒80まで上げている。国内初戦となるが持ち前の勝負強さで優勝争いをするだろう。昨年ジュニア日本新を出した川元が伸び悩んでいる。静岡、GGと日本新を狙ったがともに1分48秒台。口野は川元に連敗したとはいえ、レース後半の動きは良く、日本選手権で逆転する可能性も。
■モスクワ世界陸上標準記録 1.45.30/1.46.20
■突破者 なし
 予選1組は川元奬が1つ抜け出た強さで1分48秒43で、2位に2秒13差をつけた。3組目の横田真人は今季国内初レース。後方でレースを進め、最後だけ前に出て1分50秒43で1位になった。
1)1.47.82 横田 真人 87 (富士通・東京)7 5.17 イーグルロック ハイパフォーマンス競技会
2)1.48.20 川元 奨 93 (日 大3長野)1r2 5.03 袋 井 静岡国際
3)1.48.96 口野 武史 86 (富士通 ・千葉)2r2 5.03 袋 井 静岡国際
4)1.49.12 中村 康宏 90 (千葉陸協・千葉)3r2 5.03 袋 井 静岡国際
5)1.49.86 亀坂 晃司 90 (大阪市大5大阪)1r4 5.19 大体大 大体大中長距離競技会(第2回)

 気になるのはアメリカのレースで1分50秒かかることもあった横田の状態。アメリカに練習拠点を移し、リオ五輪に向けて新たなスタイルでトレーニングを組み立て始めた。今季は記録が出なくても仕方ない、というニュアンスのことも自身のツイッターに記入していた。
「長いスパンで見たとき、向こうのコーチのメニューで1年間とか我慢しないと効果が出ないと思ってやっています。1周毎のペースだけでなく、アップからダウンまですべて決められている。でも、日本選手権は僕にとって大きな舞台で、その結果を人のせいにするのはイヤでした。5月22日に帰国してからは、自分のトレーニングと調整で日本選手権に向けてやってきました。ラストの切れについてはわかりませんが、ハイペースで行けるトレーニングはしてきました。1分45秒台を出す難しさは知っています。アップをして、イケる感覚なら狙いますし、イケない感覚なら狙いません」


◆男子110mH 全種目エントリーリスト
 今季の戦績から八幡賢司(→)、大室秀樹(→)、矢澤航(→)の3人の争いが予想される。織田記念は大室が13秒70(+0.7)で優勝し、13秒80の八幡、13秒86の矢澤を引き離した。6日後のGGでは八幡が13秒85(−1.4)で日本人1位、大室は13秒94。矢澤はGG前日の水戸招待で13秒74(+2.0)をマークした。1台目の入りは織田は大室が速かった。GGは大室と八幡が同じくらいだったが、中盤でハードルを倒して大室が失速。前回優勝の八幡に安定感があるが、1台目からはまれば大室か。2年前の優勝者の矢澤もここ一番に強い。
■モスクワ世界陸上標準記録 13.40/13.50
■突破者 なし
 上記記事で予想した3人と、佐藤大志が4組あった予選の各組1位に。
 1組目で13秒87(−0.1)の佐藤は、織田記念では6位と振るわなかったが、東日本実業団は八幡賢司に0.02秒と迫る2位。さらに調子を上げられているという。4月から丸の内の本社勤務のフルタイムサラリーマンとなったが、現在は八王子で現場研修中。母校の青学大グラウンドまで近く、18時から20時くらいまで練習ができる環境だという。
「今回は勝ちに来ています。それができれば記録もついてくる。最低でも13秒60のアジア選手権派遣設定記録は出したい」
 2組の大室秀樹は13秒85(+0.1)。「5台目までをしっかりと試し、それ以降は流した」という。大室が重視しているのはスタートから5歩目までの加速。
「明日はそこからハードルに結びつける技術を洗練させたい。まだバラバラのところがあるので、そこに成功すればタイムも狙えます。狙うのは学生記録というよりも、世界選手権のB標準です」
 どちらも同じ13秒50だが、大室の意識が世界に向いているということだろう。
 3組の八幡は13秒79(−0.4)。2位に0.15秒差をつけた。
「昨年の初優勝はタナボタ的なところもありましたが、今年は完全に狙っていきます」
 八幡が意識している記録は3つ。13秒58の自己記録、13秒55の大会記録、そして13秒50のモスクワ世界陸上B標準。大会記録は同学年の内藤真人が持つ。「内藤君の…」と話す言葉に胸を打つものがあった。
 4組の矢澤航は13秒62(+0.1)の自己新。風が違うので八幡賢司との優劣はつけないが、2位とのタイム差は0.20秒と最も大きかった。
 昨年はフライングで失格したが、それを契機としてスタート技術を見直し、1台目までを8歩から7歩に変更している。「関東インカレでは7〜8割でしたが、今は9割」と言える状況になっている。


●女子200m
 B標準に迫っている2人の対決となりそう。静岡は1組の渡辺真弓(↑)が23秒35(+0.4)の日本歴代4位。好調の理由を「冬の練習が技術面でぶれないでできました。体の前で走る動きができるようになった」と説明する。100 mタイプと思われていたが、今季は200 mも「今の自分の走りを出せる」と感じている。静岡は2組の福島千里(↑)も23秒32(+1.0)。ベイリー(ジャマイカ)に0.01秒差という接戦を演じた。年齢的には渡辺の方が上だが、大舞台の経験は福島の方がある。高橋萌木子は3月に体調を崩した影響でレースに出ていない。
■モスクワ世界陸上標準記録 23.05/23.30
 福島は東日本実業団で23秒64。−2.0の風で、2位の渡辺真弓に0.54秒差をつけた。優位は動かない。
■突破者 なし
1)23.32 1.0 福島 千里 88 (北海道ハイテ・北海)2r2 5.03 袋 井 静岡国際
2)23.35 0.4 渡辺 真弓 83 (東邦銀行 ・福島)1r1 5.03 袋 井 静岡国際
3)23.89 0.5 神保 祐希 95Jr(金沢二水高 3石川)1 5.25 西 部 石川県高校
4)23.92 0.4 木村 茜 93 (大阪成蹊大 2滋賀)2r1 5.03 袋 井 静岡国際
5)24.02 1.7 青山 聖佳 96Jr(松江商高 2島根)1 5.26 浜 山 島根県高校
6)24.03 0.4 伴野 里緒 90 (七十七銀行 ・宮城)3r1 5.03 袋 井 静岡国際
7)24.05 0.4 藤沢沙也加 91 (セレスポ ・東京)4r1 5.03 袋 井 静岡国際
8)24.14 0.4 野林 祐実 95Jr(九州学院高 3熊本)5r1 5.03 袋 井 静岡国際
9)24.19 -0.9 杉浦はる香 95Jr(浜松市立高 3静岡)1 5.26 袋 井 静岡県高校
9)24.19 0.7 菅原 聡美 91 (中 大 4東京)1 5.26 横浜国際 関東学生



◆男子200m
 静岡で20秒21の日本歴代3位の飯塚翔太(派↑)がV候補。GGを欠場したが、翌日に「足の方は問題ない」と自身のブログに書き込んだ。高瀬慧(B→)は静岡で20秒55の4位。織田記念100 m予選で10秒23と大幅な自己新をマーク。200 mにつながれば2連勝に近づく。高平慎士(→)は静岡で8位と失速したが、GGでは高瀬を抑えて日本人トップの2位。ロンドン五輪代表だった3人だが、今季は100 mにも積極的に出場している。前半を力まずに進んでいる選手が優勝に近づく。静岡で20秒35と大幅自己新の橋元晃志(A↑)が台風の目となるか。
■モスクワ世界陸上標準記録 20.52/20.60
■突破者 7人
飯塚翔太 A・派 20.21 2013/5/3 静岡国際
橋元晃志 20.35 2013/5/3 静岡国際
山縣亮太 20.41 2013/5/26 関東学生対校
藤光謙司 20.52 2013/6/8 日本選手権予選1組
小林雄一 20.54 2013/5/3 静岡国際
高瀬 慧 20.55 2013/5/3 静岡国際
齋藤仁志 20.56 2013/5/3 静岡国際
 昨日の予選で1組1位の藤光謙司が20秒52(+0.3)とA標準に到達。「そこそこ余裕があるなかでA標準を出せたので、良いステップになる」と、決勝での記録アップに手応えを得た。藤光については東日本実業団の日刊スポーツ記事にここ数年の不調を克服した様子が記されている。
 2組は向かい風1.3mとなったなか高平が20秒73で、飯塚翔太を抑える快走。日本選手権に合わせるのでなく「あくまでも19秒台を目指す」なかで、日本選手権にも上げてきた。
 飯塚は日本選手権後にヨーロッパに遠征し、そのままユニバーシアードに転戦する。チェコを拠点に練習も行うが、この時期に練習を追い込む必要があると判断。5月は調整というよりも強化に充ててきた。
 昨年の優勝者の高瀬慧は1組4位で、プラス通過と危ない橋を渡った。しかし夕方の100mでは3位と健闘。アメリカでやってきたことが、徐々に走りにつながっている。


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