2013/10/26 実業団女子駅伝西日本大会前日
区間エントリー発表
主要区間が強力なダイハツがV候補筆頭も
新戦力台頭のチームも多く混戦の可能性も


福岡陸協速報室にスタートリスト、結果速報
 前回1〜3位のワコール、ダイハツ、シスメックスはエースが強力で、福士加代子(ワコール)、木崎良子(ダイハツ)、野口みずき(シスメックス)は今夏のモスクワ世界陸上に揃って出場した。その3チームが3強かといえば、新戦力が台頭しているチームが多く、予想が難しくなっている。

前回優勝のワコールは若手が台頭
 ワコールは優勝した昨年、3区(10.2km)の福士が11人抜きの快走でトップに立った。区間2位の野口を58秒も上回る区間新。そして、勝利を決定づけたのが5区(10.8km)の高藤千紘の区間賞だった。区間2位の伊藤舞(大塚製薬)には9秒差だったが、2位のダイハツ、3位のシスメックスを50秒以上引き離した。
 しかし、その高藤が今年は不調でメンバーに入れなかった。戦力ダウンのイメージもあるが、「今年もワコールさんが強い。トラックでタイムも出ているし、福士がいるので若い選手が安心して走れる」と評価する他チーム監督もいた。
 新戦力の一番手は5区に起用された新人の黒田真央(三島北高卒)だ。9月30日の日体大長距離競技会で15分41秒49の自己新。1週間前の住友電工杯では15分46秒07で、伊藤舞に僅差の2位となった。
 1区に起用された川西寧々は15分53秒85、2区の右田愛も15分56秒48と、ともに日体大で自己新。川西は高卒2年目、右田は1年目。若い2人が“好位置”でつなげば3区の福士でトップに立てる。
 福士は前回、トップを行く天満屋との53秒差をひっくり返した。それを再現できるとは限らないが、30秒差なら間違いなく“好位置”だろう。

ダイハツは1区に木崎を起用する充実ぶり
 昨年2位のダイハツが充実している。横浜国際女子マラソンを控えた中里を外しながら、木崎を1区に起用できる点にそれが現れている。3区はルーキーの岡小百合で全日本実業団1万mで日本人トップの3位、5区の坂井田歩は日本選手権1万m6位。岡は新人だが大体大卒で日本インカレ1万mに優勝経験がある。坂井田は他チームを経て入社した27歳(11月で28歳)でキャプテンを務め、同学年も木崎とチームを牽引する存在。
 長距離区間でブレーキをしたこともあったが「じわじわと力を付けて、年々、安定感が増している。同学年の木崎とチームを引っ張る責任感が、走りにも出ている。離れても最後でもう1回行ける粘りが特徴」と、林清司監督は信頼する。
 1区の木崎は今大会がモスクワ世界陸上後の初レースで「絶好調ではない。区間賞を取れる状態ではないので、差を開けられないようは走りをしたい」という。他チームの出来次第では3区でトップに立つ可能性もあるが、間違いなく5区の坂井田で勝負ができる布陣になった。

シスメックスは高卒ルーキー3人。野口は「去年よりも良い練習ができています。落ち着いた走りを見せたい」
 前回3位のシスメックスは、野口みずきが3区で8人抜きを演じてチームを流れに乗せた。その野口はモスクワ世界陸上は熱中症で途中棄権。木崎と同様、今大会が復帰戦だ。
 復調途上と思われるが、いつもの“強気なみずき”に戻っていた。
「帰国後1週間休みましたが、3週間後には(本格的な)練習を始めました。この大会に向けては去年よりも良い練習ができていますよ。世界陸上後は調子も良くて、脚の感じも問題ありません。(3区で)落ち着いた走りを後輩たちに見せたいですね。私に頼るばかりではダメなんですが、1区の田中(美里)や5区の高山(琴海)も頑張ってくれています。1年生も多くメンバーに入っているので、(先輩たちの)頑張りを見てほしい。みんな私に負担をかけないようにしてくれているので、私の方が足を引っ張らないようにしないと」
 田中美里と高山は9月の全日本実業団1万mでともに32分40秒台と、そろって自己新。上り調子で今大会を迎えている。
 そして西川生夏、五十嵐藍という実績のある選手ではなく、2区の大久保美里、4区の西田留衣、6区の田中花英と高卒の新人3人を起用してきた。全日本実業団ジュニア3000mで田中と大久保が自己新。経験を積ませる狙いもありそうだが、先輩選手たちが好位置でタスキを渡せば予想以上の力を出す可能性もありそう。
 野口が他チームのエースと互角以上の走りができればトップ争いに加わりそうだ。

天満屋は1区に高卒ルーキーの谷本、2区に注目の翁田
 昨年4位の天満屋は3区に重友梨佐、5区に小原怜と興譲館高先輩後輩のエース2人を順当に配置してきた。意外だったのは1区が9月29日の日体大長距離競技会で15分30秒82を出した翁田あかりではなく、高卒1年目の谷本観月を起用したこと。翁田は2区だった。
 浦川哲夫監督によれば日体大の後に翁田に脚に痛みが出たことが理由。1区の谷本は全日本実業団ジュニア3000m12位、9分30秒66がベストの選手。荷が重いと考えるのが普通だが、1区に起用してきたからには期待できる選手ということだろう。
 故障明けとはいえ女子長距離界注目の翁田が快走する可能性は高い。北海道マラソンでは12位(2時間51分55秒)と振るわなかった重友も、3区に起用されたのであれば復調しているのは間違いない。
 1区の谷本が上位でつなげば、天満屋もトップ争いができる。

過去最高の仕上がりの大塚製薬
 前回5位の大塚製薬の評判が上がっている。1週間前の住友電工杯5000mでテグ世界陸上マラソン代表だった伊藤舞が15分46秒'04で優勝、井上彩花が15分52秒'95の自己新、岩川真知子が15分56秒'32の入社後ベストをマークした。1区井上、3区伊藤、5区岩川と配置した。
 大塚製薬は昨年12月の全日本実業団対抗女子駅伝でチーム最高順位の7位に入賞したが、そのとき5区で区間7位と好走した岡田唯が今回は2区。
「あのときより確実にチーム力は上です」と河野匡監督は手応えを得ている。
 西日本大会出場チームでは4位のワコール、6位の天満屋に続く3番目で、ワコールとは1分33秒差だった。どのチームも全国大会と西日本大会では位置づけも調整も違うが、この差を縮めてくる可能性はある。
 エースの伊藤は西日本大会では5区が多かったが、今回は3区。
「私の区間で、後ろが走りやすい位置に持っていきたい。故障者がなく、良い状態で迎えられました」
 過去最高順位は前回の5位。3位以内に食い込んでくる可能性も十分ある。


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