2012/5/26 第224回日体大長距離競技会
川元が1分46秒89のジュニア日本新
1位・横田は1分46秒87でA標準突破ならずも自身12回目の1分46秒台



















●気象状況
 天候は薄曇りというところか。風は800m12組の前の男子10000m5組のときは、ちょっと強いな、という印象。日体大スタッフも「この時間(17時25分頃)にやまないと、このままやまないかもしれない」と心配していた。
 日本選手権まで2週間という時期に中距離で記録を狙うことに対しては意見が分かれる。実際、今日のレースを見送った有力選手も多い。敢然と挑んだ選手たちの意気に応えたか、800 mスタート時には、風もかなり弱まった(まったく気にならないところまではいかなかったが)。

●レース展開
 ペースメーカーは笹村直也(慶大)と松井一樹(日大4年)の2人。五輪A標準突破を狙う横田真人(富士通)の後輩と、やはり標準記録突破を狙う川元奬(日大2年)の先輩が務めた。
 当初の設定は「ペースメーカーが400 mを51秒、600 mを1分18秒切り」(平田中距離部長)というもの。100 mで富士通コンビが前にいたと思うが、ペースメーカーもしっかりと前に出て200 mを24秒5で通過(寺田計時。以下同)。
 ホームストレートには笹村、松井の順に入り、松井の2mほど後ろに横田、その後ろに川元、口野武史(富士通)と続いていた。400 mは3番手の横田が51秒8で通過。

 500mで笹村がやめると松井が引っ張る。横田はスッとつくが、川元はペースが中だるみしてしまう。口野が川元をかわし、600 mでは横田の背後にピタッとついた。松井は600 mを1分19秒0で通過。横田は1分19秒3。日本記録の1分46秒16を同じ日体大で出したときよりも0.6秒遅い。400 m通過は日本記録と同じだった。設定タイムとの遅れからも、400 mから600 mがやや遅かったといえる。

「中途半端なペースダウンでした。もっと遅くなったら外から行ったと思うのですが、松井も踏ん張ってくれていたので…」と横田。中距離はこうしたレース展開のあやも影響する。難しいところだ。
 600 mで松井がやめるとそのまま横田が先頭に立ち、それを口野も良いリズムで追いかけていたように見えた。が、レース後に話を聞くと、そこまで良いリズムではなかったようだ。
「600 mで川元を抜いた加速がついていたんです。ラストで苦しくなると思いましたが、600 〜700mで0.1秒でも0.2秒でも行きたいと思いました。でも、このレベルだとコーナーで抜くことはできません。そこで(頑張りすぎて)リズムが崩れました」

 それに対して川元は、「600 mまで引っ張ってくれた松井先輩から『行けっ』と渇を入れられて、気持ちが入りました」。コーナーを富士通コンビの後ろで無理せずに走ると、最後の直線に入って2人との差を少しずつ縮め始めた。「横田さんに並んだかもしれません。最後は横田さんの意地に負けました」

 横田が胸ひとつ先着して1分46秒87。目標のA標準(1分45秒60)には届かなかったが、自身12度目の1分46秒台をマーク。自身のツイッターで「良いのか悪いのか、もう46秒台でもなんとも思わなくなった」とコメントした。
 川元は1分46秒89。自己記録(1分48秒03)を1秒14も更新、1分47秒台を飛び越えて自身初の1分46秒台をマーク。村松寛久(当時山梨学大)が1996年に出した1分47秒13のジュニア日本記録を16年ぶりに更新した。
 3位の口野は最後に少し離されたが、1分47秒67と自己3番目の記録をマークした。

●川元奬コメント
「絶対に標準記録を出す、という気持ちがジュニア記録につながりました」
「ジュニア記録はうれしいのですが、標準記録を破れなかったのは残念です。(1分46秒台を出せたのは)気持ちが大きいですね。標準記録を切るつもりでしたし、今日はこういった記録を狙える環境を関係者の皆さんがつくってくれました。横田さんと競り合うことができたこともそうですし、笹村さん、松井先輩がペースメイクをしてくれたこともそうです。そういった期待に応えたいと思っていました」
「こういう練習をしたから記録を出せた、こういう肉体的な状況だからできるということは、あまり意識しません。高校の頃からそうなのですが、練習で走れれば試合でも走れるという考えです。日大の中距離ブロックは松井さんが井部コーチと相談されてメニューを考えてくれるのですが、そのメニューをひたすらこなしてきました」
「今日走ってみて、B標準(1分46秒30)は確実に行けると感じました。でも、目標はA標準(1分45秒60)です。A標準を狙っていけばB標準も自然と切れます。高校記録も絶対に出すと思って出せました。今日もそういう気持ちで走れたので、B標準は切れませんでしたがジュニア記録が出せた。絶対に出す、という気持ちがつながったと思います」
「動きが高校時代と変わったという感覚はありませんが、ラストスパートはよくなっています。(そこを練習したというより)力がついたのだと思います。目標にしていた横田さんに一歩ずつ近づいて来られている。もっと精進して頑張ります」

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