2011/7/11 
世界選手権代表50選手が発表
記者発表時の一問一答


福島、室伏ら世界陸上日本代表、50人が発表(スポーツナビ)
「戦うことが目標。“強者”を結集してロンドン五輪に向けて最後の仕上げをしたい」
◆まず代表選考の方針について
高野進強化委員長 昨日までのアジア選手権は金メダル11個、メダル総数でも中国を上回りました。選手たちが選考競技会という認識を十分持ち、18名がシーズンベスト、内6名がパーソナルベストとしっかり力を発揮してくれました。その結果をもとに選考資料をつくり、理事会で承認していただきました。
 強化委員会としては精鋭メンバーという方針で選ばせていただきました。前々回の大阪大会では地元枠も含めて80名を選びました。種をまく作業をしたわけです。前回のベルリン大会は59名を選びました。有資格者はA標準、B標準の選手、ほとんどを派遣しました。しかし今回は、選手たちの出たい気持ちはわかりますが、出るだけで終わってはいけない、戦うことが目標の選手を選びました。いわゆる“強者(つわもの)”を結集して、ロンドン五輪に向けて最後の仕上げをしたい。そういう観点で選考させていただきました。
 選考基準はご存じの通りです。日本選手権で内定者が8名決まっていました。今回は2項、3項の該当者、すなわち日本選手権の優勝者、その他の選考会の優勝者と上位選手から、リレーは特性を考慮して選ばせてもらいました。
※代表発表後に質疑応答に

「前回のメダル2個、入賞5を下回らないようにしたい」
Q.メダルと入賞の目標と、その根拠は?
高野委員長 前回がメダル2個、入賞5でした。数字的にはそのあたりを、前回を下回らないところを目標にしています。女子マラソンとハンマー投の室伏(広治)君、やり投の村上(幸史)君、彼らがベストパフォーマンスをしてくれれば、メダルを取る可能性はあります。ただ、確実性はまだありません。簡単ではありませんが、その3名がメダルを目標にしているのは確かですし、私たちも期待をしています。
 男子4×100 mRは冷静に現状を分析すると、メダルは簡単には行きません。もちろん、ロンドン五輪でメダルを取る準備はしています。しかし、現状の走力、誰も(100 mでは)標準記録を破っていないことを考えると、入賞が目標になります。これまでの伝統を守るというところです。それも簡単なことではありませんが、なんとしても決勝には行かせたい。
 その他では男子マラソン、女子長距離、競歩といったところから複数が出て、前回を超える数字が目標になります。そのときの調子のいい者はどんどん入賞にチャレンジしてほしい。

女子4×400mRを派遣しない理由は?
Q.(標準記録を破っている)女子の4×400mRを派遣しない理由は?
高野委員長 そこは私たちも検討しました。個人の場合は標準記録突破者個人が選ばれますが、リレーは標準記録突破メンバーがイコール、選考のメンバーと同じではありません。リレーの資格を取ったメンバーが同じ調子か、ほぼ同じ力のある者が集まることが前提です。ご存じの通り千葉(麻美)さんが選考会に出ていません。標準記録突破時と同等の力があるかどうかを評価する基準として、目標記録を周知しました。53秒台平均の記録を出すか、今回のアジア選手権で3分32秒を切ること。それを担当部長から選手、コーチに提示し、そこを目標に選手も走り、残念ながら達成できませんでした。私たちも派遣したい気持ちはありますが、自分たちで戦うメンバーという基準を決めた以上、今回は派遣しないという結論になりました。

B標準を破っていない2選手選考の理由は?
Q.アジア選手権で優勝してA標準扱いになって選ばれた選手もいますが、実際はB標準に届かなかった選手もいます。そういった選手が戦う集団なのかどうかという判断はどうしたのか?
高野委員長 エリア・チャンピオンをどう扱うか。仮に(アジア選手権エントリー選手の)キャンセルが続出して、低い記録で優勝しても派遣するのかが事前に議論になりました。その際、B標準を1つの目安にしようと。B標準相当、もしくは本大会の予選突破や決勝のラインを見て、戦えるメンバーを検討しようと。あるいは、アジア選手権の勝負の仕方やレースの仕方を見て判断しましょうと。
 ハンマー投の綾(真澄)さんですが、明らかに不利な濡れたサークルという条件でした。雨天の中で回転するのはかなり不利になります。そこで安定して65mを投げ、67mの優勝記録はB標準の69mにあと僅かでした。B標準相当になりますしなおかつ、68m50が決勝進出の最低記録だったというデータもあります。つまり、可能性を秘めている選手です。エリア・チャンピオンで日本チャンピオンでもありますから、外す理由はありません。次に良い条件で投げれば70m近く行ってくれる期待が持てます。
 次に早狩(実紀)さんですが、前半から独走状態であり、気温が高いなか9分52秒とB標準の9分50秒に近い走りでした。走り方も積極的でしたし、引っ張られればB標準突破も可能なレースぶりでした。日本チャンピオンでもありエリア・チャンピオンでもあり、歴史は浅いですけどアジア選手権の大会記録でした。冒頭で述べた“強者”の仲間入りをしてくれるのではないかということで選考させてもらいました。

絹川が1万mに出場する可能性は?
Q.絹川愛選手が日本選手権の5000mで内定した後、1万mでもA標準を破りましたが、本番で1万mに出る可能性は?
高野委員長 まず今回、理事会で代表選手を当該種目でキチッと選んだということです。その先は選手団がどのように戦うチームを組むか、戦略を練るかで最終エントリーが決まります。(選手団リストの)名前の横に種目と資格記録が載っているのは、その種目に出ることを希望して、その種目で資格を取ったわけです。まず自分が選ばれた、国民の期待を意識しながら代表になった種目を最優先することになります。そのシステムの中で、日本選手団で考えられる戦略は考えていく。今ここでイエス、ノーは断言できません。
Q.選考会の1万mに出ていなくても可能性はあると?
高野委員長 絶対に出ますとも、絶対に出ませんとも、言えません。少なくとも5000mの有資格者なので、そこでベストパフォーマンスを目指すのが責任としてあります。その先は色々な戦略を踏まえ、本人や所属チーム、私どもの責任で決めていきます。

リレー代表の個人種目出場は?
Q.同じようにリレーで選ばれた選手が、個人種目で今後標準記録を突破した場合、同様の判断をしていくことになる?
高野委員長 同様でよろしいかと。他の種目は今日で締め切ってプラスはありません。責任として、今回決まった種目でまず仕事をする。リレーメンバーは、リレーメンバーとしての仕事があります。他種目との不平等感が生まれてしまいますから、短距離だけまだチャンスが残されていて、どんどん挑戦していいよ、というものが前面に出てくるとおかしな話になります。江里口(匡史)君に関しては、100 mの日本選手優勝者であり、A標準なりB標準なりを破れば出る権利はありますが、100 mに出るかどうかはリレーの戦略、我々の持っている戦略全般のなかで、この後100 mの試合に出るかどうかを判断していきます。日本代表ですから我々と本人の確認の中で出ます。そこで標準記録を破ったとしたら、本大会の100 mに出るかどうかは、これも我々と本人の間で確認していくことになります。女子も男子もリレーメンバーは同じで、権利を得るため個人の判断で100 mに出まくるとか、周りが応援して早く破れとかいう雰囲気をつくることは望んでいません。

リレーの特性の判断は?
Q.日本選手権の順位と逆転しているのが、短距離の小谷優介選手と川面聡大選手です。リレーの特性を考慮しての判断だと思うのですが、具体的にどう考慮したのか?
高野委員長 日本選手権のチャンピオンは絶対だと思いますが、2位、3位はリレーの特性や近々の大会の順位で判断します。アジア選手権のリレーで適性を見ましたし、合宿もガンガン開いていますから、どの選手がどのような走りをするか、どのようなバトンパスをすれば上手くいくかをチェックしています。そのなかで短距離部から案を上げてきて、私も確認していいだろうと判断しました。個人が標準記録を破っていて(日本選手権の順位と)逆転したら問題ですが、リレーの特性や、学生はユニバーシアードとの絡みもあり、こうなりました。


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