2011/4/23・24 日本選抜和歌山大会
右代、8000点突破に失敗も好感触
1日目の悪コンディションの中、自己新ペース
スプリント系種目にトレーニングの成果


 悪天候に見舞われた初日を、7930点の日本歴代2位を記録した前年からマイナス24点の3882点で終えた右代啓祐(スズキ浜松AC)。2日目の8種目目の棒高跳終了時点で6329点と、昨年とまったく同じ点数で並んだ。
 初日終了時に「武器であるやり投に頼らず、110 mHや円盤投でベストに近い記録かそれ以上を出せれば、8000点も見えてきます」と話していた右代。110 mHこそ昨年より0.12秒遅れたが、円盤投で自己新をマークし棒高跳でも前年を10cm上回った。残り2種目で、昨年よりも上積みをすれば8000点の可能性も出てきた。

 9種目目は右代自身が「武器」というやり投である。自己ベストは73m82。昨年は69m49で882点と、10種目中最高得点を稼いだ。ところが今年は65m73−61m57−63m28で824点に終わってしまう。残り1種目というところで前回よりもマイナス58点。
 世界選手権B標準の8000点に到達するには、最後の1500mで847点を取らなければならなくなった。タイムにすると4分14秒93で、右代のベスト記録よりも約12秒速く走らないといけない。やり投終了時点で8000点への挑戦は、ほぼ不可能になった。

右代の日本選抜和歌山大会2010年と2011年の比較
2010和歌山 2011和歌山
種目 記録 得点 累計 種目 記録 得点 累計
100m 11"27(+1.9) 801 801 100m 11"37(-1.6) 780 780
走幅跳 6m84(+1.0) 776 1577 走幅跳 7m03(+1.8) 821 1601
砲丸投 13m41 692 2269 砲丸投 13m68 709 2310
走高跳 2m05 850 3119 走高跳 1m99 794 3104
400m 50"61 787 3906 400m 50"80 778 3882
110mH 15"16(+0.2) 830 4736 110mH 15"28(-0.1) 816 4698
円盤投 45m36 774 5510 円盤投 45m75 782 5480
棒高跳 4m70 819 6329 棒高跳 4m80 849 6329
やり投 69m49 882 7211 やり投 65m73 824 7153
1500m 4'33"94 719 7930 1500m 4'41"34 672 7825

 右代はやり投の失敗を次のように説明した。
「リリースポイントが顔よりも前に出てしまいました。左足が着いたときに手がもう前に来ていたんです。力の入るポジションができませんでした。それを3本のなかで修正できなかったのが反省点です」
 記者たちから“力みがその原因なのか”、という意味の質問が続いた。棒高跳で昨年の点数に並んだといっても、8000点を出すためにはやり投で920〜930点は取る必要があった。それには自己ベストに近い72m台を投げなければいけない。
 先ほど“残り2種目で、昨年よりも上積みをすれば8000点の可能性も出てきた”と書いたが、それが簡単なことではなかったのである。右代が初日終了後に「やり投に頼らず」と言ったのは、「やり投が来るまでどうなるかわからない、という試合はしたくない」という意味だった。つまり、やり投が68mとか69mでも8000点に届くよう、110 mHと円盤投、棒高跳で稼いでおきたかった。

 やり投で72mを出さないといけないという事態は避けたかった。力みが生じても不思議ではないが、右代はそれを否定する。
「そんなに点数を出そうと思っていたわけではなく、他の種目と同じように落ち着いて、なおかつ全力で挑むことを心がけていました」
 では、以前に、リリースポイントが前にずれたことはあったのか?
「何回かありましたが、だいたいは3投のなかで修正できていました」
 どうして今回は修正できなかったのかは、右代の中でも分析し切れていないようだった。

 それでも、右代は今回の7825点という結果に悲観していなかった。むしろ、「8000点に向けた準備ができた」ことが表れていたと、前向きにとらえている。
「1日目が悪天候でしたが自己ベストのペースで進められました。昨日の100 mでは向かい風1.6mで、ベストに近い11秒37で走れました。400 mと110 mHは自己記録が出ませんでしたが、レース内容は悪くありませんでした。冬場にやってきたスプリントのトレーニングの成果が出てきていると思います」
 世界選手権前の試合は6月の日本選手権と、7月のアジア選手権の2試合しかないが、右代に焦りはない。
「全てのコンディションと自分の状態が合ったとき、すごい記録が出るんじゃないかと手応えを感じています。(日本選手権には)落ち着いて臨みたい」


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