2011/1/30 大阪国際女子マラソン
赤羽が強風下のレースを万全の内容で制覇
レース後の一問一答


「後半は向かい風がきつくて、スパートするタイミングがつかめませんでした」
Q.レースを振り返ると?
赤羽有紀子 前半はペースメーカーの方たちがいて、良いペースで引っ張ってもらい、楽に走ることができました。後半は向かい風がきつくて、なかなか勝負所というか、スパートするタイミングがつかめませんでした。余裕があったので向かい風がちょっと緩んだところで行きたかったのですが、結局、残り4kmくらいでスパートする形になりました。それでも、念願の優勝をすることができとても嬉しいです。
Q.伊藤(舞・大塚製薬)さんを引き離した際は、何を考えてスパートしましたか。それと、フィニッシュテープを切ったときの率直な感想は?
赤羽 スパートのタイミングがなかなか見つけられなくて。伊藤さんも余裕があると感じられたので、一気にスパートしないと離せないかな、と思って(スパートしました)。で、一気に行ったつもりです。でも、なかなか離れないかなと思って、初めて後ろを振り向いてしまいました。最後、優勝のゴールテープを切ることができたときはすごく嬉しかったです。
Q.何kmくらいからスパートのタイミングを探していたのですか。実際にスパートするまで、揺さぶりはかけませんでしたか。
赤羽 最初はペースメーカーの方が25kmで終わったときに、そこがちょっと追い風の部分でもあったので行こうかなと思いましたが、30kmまでは我慢しようと思い直しました。大阪城に入るときに皆さんが1回下がって前に出される形になったので、大阪城を出てからの下りを使ってペースを上げたつもりでしたが全然離れません。大きい道に出たら向かい風になったので、そこも我慢しようと。35kmの給水をしたときは伊藤選手と2人で、残り7kmで余裕もあったので、もう1回スパートと思って前に出ましたが、やっぱり向かい風で断念しました。

「練習の量も質も、1つ上のところでこなせたので自信がありました」
Q.今日の気象条件から、(世界選手権の代表内定条件である)2時間26分を切ることは最初から無理と考えていたのか、途中で勝負に徹しようと思ったのか、どちらですか。それと、伊藤選手を引き離した距離が、昨年リタイアした距離と近かったのですが、その辺の意識はありましたか。
赤羽 今回のレースは勝負に徹していました。タイムを気にしたのはトラックに入って電光掲示を見たときです。26分は切れないかもしれないと思いました。昨年のリタイアした場所と近いということは、特に気にしていませんでした。
Q.終盤まで呼吸や脚が、競り合いのなかでもきついかな、ということはなかった?
赤羽 スパートするまではホント、余裕がありました。はい。
Q.余裕は、昨年4月のロンドンからここまでの過程で、どういう部分で持つことができてこのレースに生かせたのですか。
赤羽 まずはケガなくスタートラインに立てたことが一番です。そして練習の量も質も、1つ上のところでこなせたので、そういうところで自信がありました。

「ホントに勝てると確信できるところまでスパートしなかったのは成長できた部分」(赤羽コーチ)
Q.赤羽コーチはどういう気持ちでモニターを見ていたのですか。
赤羽コーチ 風が非常に強い気象条件で、25kmでペースメーカーがいなくなってレースをどうするか、というところ(が焦点)でした。これまでトラックでは、若い選手が行かないから自分が行かなきゃ、というレースが多くて、終盤若い選手にスピードで負けてしまうことが何度かありました。今回は勝負に徹して、自分で押し切れると確信を持てるまで出るな、という話をしていました。向かい風の影響もあったと思いますが、25km手前からペースメーカーのペースが上がらず、本人がちょっとイライラして前に出そうになっていたんんですが、『前に出るな、前に出るな』という気持ちで見ていました。ホントに勝てると確信できるところまでスパートしなかったのは成長できた部分かな。
Q.マラソン5回目で、世界選手権選考レースでもあり、勝ちにこだわったレースで優勝できた意義は?
赤羽 勝負強い選手になりたいとずっと思っていたので、こういう中で勝てたことはすごく自信になります。
Q.コーチにお聞きしますが、ケガのリスクを減らしながら量も質も増やしたということは、練習の中で違うところでさじ加減をしたということですか。
赤羽コーチ ポイントとなる強度を上げる練習と、次の強度を上げる練習の間隔を、少し余裕を持たせたというのが1点です。その間の日数だけでなく、今までであれば体調が良ければ速めのジョッグでつないだ日もありましたが、今回のマラソン練習に入ってからは、強い練習の翌日は120分のLSDにしました。それもロードは使わず、ほぼクロカンでやっていました。クロカンができない場所の時は土のグラウンドか、もしくは芝のグラウンドなどでペースを上げないでやる。そういったところで故障のリスクを減らしながらも、距離は落とさないことを今回は取り入れました。
Q.(質問不詳)
赤羽コーチ どの選手もマラソン練習の中で30km走、40km走をやると思います。40km走の次の日のスピード練習も多くの選手がやっていますが、ウチの選手に関してはそれをやると故障をする。それが何回かやってきて結果としてそうなっていたので、考えを少し変えて、1つ1つのポイント練習でしっかり追い込むけれど、そのあとは疲労を抜く、張りが出ていたり違和感があったらそれが落ち着くまで焦ってやらない。それを徹底しました。

「17kmで娘の応援してくれた顔を見て、体がすごく楽になりました」
Q.優苗(ゆうな)ちゃんは今日はどこで応援されていましたか。また、ママさんランナーとして、優苗ちゃんはどんな存在ですか。
赤羽 今回は17kmの橋の上と、30km過ぎの森の宮の駅のちょっと先のところ応援してもらいました。前半の17分ペースが正直、ちょっと速いと思ってしまっていましたが、17kmで娘の応援してくれた顔を見て、体がすごく楽になりました。娘の存在はとても大きなもので、いつも力をもらっています。
Q.世界選手権の最有力候補となりましたが、世界選手権に向けてどんな大会にしたいのか。コーチにもお聞きしたいと思います。
赤羽 そうですね。世界選手権ではやっぱりメダルを目標に、次のロンドン五輪の代表になれるような走り(=メダル獲得)ができればいいな、と思います。まずはケガをしないでもう一段上の練習をできるようにしたいと思います。
赤羽コーチ 8月の世界選手権を来年のロンドン五輪に直結するレースだと位置づけ、昨年8月の段階で2011年のマラソンは3本走ると話し合って決めました。今回の大阪と4月のロンドン、そして8月のテグの世界選手権と。今回の大阪はその最初のステップでした。内定確定ではありませんが、選んでいただけるという前提で、最初の関門をクリアしたかなと思います。ロンドンで記録を狙える手応えを私も本人も感じていると思います。ロンドン・マラソンで世界の強豪と戦いながら、3位入賞と自己記録の更新、できれば2時間23分を切る記録を狙って、スピードも勝負強さも自信を持って8月を迎えられたらと思っています。

「夫婦だからという部分ももちろんあるのでしょうが、純粋にこの選手を強くしたい、という気持ちにさせてくれる」(赤羽コーチ)
Q.フィニッシュした後の余裕度を上手く言い表せますか。過去のマラソンと比べたり、ご自身の中で数字にしたりして。
赤羽 いやぁ、どうでしょう。でも、一番余裕があります。いつも後半きつくなって失速という形が多かったのですが、今日はきつくなって失速したのでなく、風がきつくてペースが落ちたという形なので。そういう部分で違うかな。
Q.赤羽コーチは赤羽選手を支える上で、去年は苦しい思いも多くしたと思いますが、自分の心をどのように前に持って行けたのですか。
赤羽コーチ 本人は年齢的に31で、今年32になるシーズンですが、4年に1回のオリンピックという流れで考えると、次のロンドンがオリンピックを目指すということでは最後かなと思います。本人の目標がしっかりと定まっているので、支える側としてはやりやすいですね。そこに向けて妥協なく、ストイックに競技活動に取り組んでくれますので。最初のオリンピックに向けてはトラックで勝負をする、自己記録を全部更新する、ということに応えてくれて、結果を出しました。で、マラソンにチャレンジしましたが、なかなか結果を出せませんでした。しかし昨年のロンドンで自己記録を更新でき、なんとかマラソンでも形にできるのでは、と。1つ1つこちらが考えることに対して、きちんと結果を出してくれる選手なので、コーチ冥利に尽きるというか、仕事としてのやり甲斐を感じさせてくれます。夫婦だからという部分ももちろんあるのでしょうが、純粋にこの選手を強くしたい、という気持ちにさせてくれるので、そういう部分が大きいと思います。


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