2007/10/14 第5回静岡県長距離強化記録会
佐藤悠基が27分51秒65の学生歴代4位
国内レースでは日本人学生最高
ハイペースならではのレース展開
男子1万m第5組は19:50スタート。記録を狙うには絶好のコンディションだった。エコパの特徴として風がほとんどない。昼間から曇っていたのに加え、日が落ちて気温もかなり下がった。
レース前半は岩井勇輝(旭化成)、松岡佑起(順大4年)、佐藤悠基(東海大3年)の順で、3人の“ゆうき”が日本選手1〜3番手を走っていた。北村聡(日体大4年)、尾田賢典(トヨタ自動車)、佐藤秀和(トヨタ紡織)らも、エチオピア、ケニア選手たちの作り出す1周1分06〜1分07秒台のハイペースについていた。ハイペースのときの特徴なのか、集団の中の位置取りが、ほとんど変わらない。
3000m付近で佐藤秀、4000m手前で尾田と遅れ、4000mを過ぎると佐藤悠が日本選手のトップに出た。5000m付近で岩井が、間もなく北村が離れ始めた。そして5600mで松岡も遅れる。遅れ出すときは1周で7〜8m差がつき、すぐに10m、20mと開いていく。これも、ハイペースだからだろうか。
外国人選手たちと互角に走る佐藤の姿は、いつ以来だろうか。4〜5番手に上がることもあった。ただ、つねに2レーンあたりを走ることとなっていた。レース展開上仕方がないが、大崎栄コーチが残念がった部分である。9000m手前で外国勢のペースが上がった。そこで一気に上がると佐藤悠は苦しい。日本選手のペースメーカーであるダビリ(小森コーポレーション)には、「ダビリ抑えて」と若倉和也監督から声が飛ぶ。
9600mは26分48秒8の通過。最後の1周を1分01秒でカバーすれば北京五輪A標準(27分50秒00)だったが、佐藤もいっぱいいっぱい。1秒65差でA標準に届かなかった。
日本選手トップの400 m毎と1000m毎の通過&スプリットタイムは以下の通り。
距離 通過 スプリット 日本選手1位 400 01:09.4 01:09.4 岩井勇輝 800 02:15.1 01:05.7 岩井 1200 03:22.4 01:07.3 岩井 1600 04:28.8 01:06.4 岩井 2000 05:35.9 01:07.1 岩井 2400 06:42.3 01:06.4 岩井 2800 07:48.9 01:06.6 岩井 3200 08:56.2 01:07.3 岩井 3600 10:03.2 01:07.0 岩井 4000 11:10.2 01:07.0 岩井 4400 12:16.8 01:06.6 佐藤悠基 4800 13:24.9 01:08.1 佐藤 5200 14:32.6 01:07.7 佐藤 5600 15:38.8 01:06.2 佐藤 6000 16:45.5 01:06.7 佐藤 6400 17:52.0 01:06.5 佐藤 6800 18:59.8 01:07.8 佐藤 7200 20:06.9 01:07.1 佐藤 7600 21:13.3 01:06.4 佐藤 8000 22:20.1 01:06.8 佐藤 8400 23:27.2 01:07.1 佐藤 8800 24:34.6 01:07.4 佐藤 9200 25:41.2 01:06.6 佐藤 9600 26:48.8 01:07.6 佐藤 10000 27:51.65 01:02.8 佐藤
※寺田計測
距離 通過 スプリット 日本選手1位 1000 02:47 02:47 岩井 2000 05:36 02:49 岩井 3000 08:22 02:46 岩井 4000 11:10 02:48 岩井 5000 13:58 02:48 佐藤悠基 6000 16:45 02:47 佐藤 7000 19:33 02:48 佐藤 8000 22:20 02:47 佐藤 9000 25:07 02:47 佐藤 10000 27:51.65 02:44.6 佐藤
A標準に1秒65届かず「力不足」
「ラスト行けそうなところでペースが落ち、力不足を感じた」と佐藤悠。「ガンガン行けなかったところがありました。残り2周のところで、1周タメようと思いましたが、タメるというよりも気持ち落とした感じになりました」
9200mまでの1周が1分06秒6だったのに対し、9600mまでの1周が1分07秒6と1秒落ちた。ここでペースを維持し、なおかつタメることができれば、最後の1周で1秒上げられたという分析だ。
「ラスト200 mでもタメる感じになってしまって、結局、ラストスパートは最後の100 mでした。ガンガン行けていれば、2秒はなんとかなりました」
A標準を切れなかったことへの反省を強調していた佐藤。27分台にも「出せて当たり前。喜びはありません」ときっぱり。
再度、U23のトップ争いに
U23プロジェクトの研修会も行われるため、この日出場しなかった三津谷祐(トヨタ自動車九州)、上野裕一郎(中大)、竹澤健介(早大)もトラックのすぐ外から応援。特に佐久長聖高の先輩でもある上野からは、「A標準切れるぞ」と大きな声が飛んでいたようだ。
歴代 記録 選手 所属 年月日 場所 成績 大会 1 27:45.59 竹澤健介 早大 2007/4/29 パロアルト 9 カージナル招待 2 27:48.55 渡辺康幸 早大 1995/8/5 エーテボリ 世界選手権 3 27:51.61 瀬古利彦 早大 1978/7/3 ストックホルム DNガラン 4 27:51.65 佐藤悠基 東海大 2007/10/14 袋井 7 静岡県長距離強化記録会(第5回) 5 27:53.19 永田宏一郎 鹿屋体大 2000/12/2 諌 早 タイムトライアルin長崎 27:53.82 渡辺康幸 早大 1995/8/8 エーテボリ 世界選手権 27:55.81 渡辺康幸 早大 1995/6/10 国 立 日本選手権
惜しくもA標準は切れなかったが、トラック・シーズン前半の不調からは完全に脱した。1万mの学生歴代上位3傑はすべて、海外のレースで出た記録。この日の27分51秒65が日本で出た最高記録となる。
「ちょっと復活してきたかな。一安心というか。これで他の学生選手にも刺激となって、どんどんレベルアップしていけたらいいですね」
中学から同世代のトップ争いをし続けてきた佐藤悠が、U23のトップ争いにしっかりと戻ってきた。
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