2007/1/21 全国都道府県対抗男子駅伝
3・7区の区間賞は実業団選手
注目の学生選手たちを抑える


 前日の展望記事で触れたように、学生選手が注目されていた今大会。実際、箱根駅伝という人気のあるレースで好走しただけでなく、今の学生には実力のある選手たちが揃っている。例年、実業団勢が取っていた3・7区の区間賞を、今年は学生選手が取るのではないかという声も挙がっていた。
 だが、終わってみれば両区間とも実業団選手が区間賞。意地を見せた形となった。


●3区編
優勝戦線で走った竹澤&上野を
最下位スタートの大森が上回る


 3区はトップと並んでタスキを受け取った竹澤健介(兵庫・早大2年)が前半から飛ばした。箱根駅伝2区の区間賞。距離表示に疑問は残るものの、1kmを2分35秒で入った。佐藤智之(大分・旭化成)、内田直将(愛知・トヨタ自動車)という名前のある実業団選手を1kmを過ぎて振りきった。
 さすがに飛ばしすぎたのか、終盤で若干のペースダウンを余儀なくされたが、23分50秒で区間3位。大分に9秒差をつけて4区に中継した。
「最初から結構きつかったですけど、自重する走りではいけないと思いました。後ろとの差を考えて、前半から突っ込みました。結果的にトータルタイムは落ちましたが、積極的な走りには満足できます。正直、調子は良くありませんでしたが、引く走りではチームのプラスになりません」
 これだけ攻めの走りをした竹澤だが、自身の役割は「つなぎ」だと話す。3区には強い選手も多く出場しているため、それほど大きな差はつけられない。4・5区に強力高校生を擁するチーム事情を考えれば、十分に役割を果たした。
「つなぐことだけを意識しましたが、(今回の駅伝では)それしかできません。3年連続2位にすべて絡んでいましたけど、そういう意識を持つことで結果的に悔しさを晴らすことができました」

 竹澤を後半追い上げたのが、箱根駅伝3区区間賞の上野裕一郎(長野・中大3年)だった。混戦状態でタスキを受けたため、「いきなり5チームくらいが来て、煽られました」と苦笑する。それでも、福岡や千葉、落ちてきた愛知らの実業団選手を引き離し、3位で4区に中継。23分47秒の区間2位で、先頭を行く兵庫との差を3秒だが詰めることに成功した。
「兵庫に追いつくことがテーマでしたから、申し訳なかった。ただ、23分48秒を予定していましたから、記録はまあまあ。予定よりも速く突っ込んでしまい、その後はイーブンで行けたのですが、最後の1kmがへっぽこでした。区間賞を取れなかったのは、ラスト1kmが原因です」

 上野と竹澤を抑え、23分44秒で区間賞を獲得したのが05年世界選手権代表だった大森輝和(香川・四国電力)。47位(最下位)でタスキを受け、前のチームと34秒もの差があるモチベーションの上がりにくい状況だったが、大森は前を積極的に追った。23分44秒で9人抜きを演じた。
「学生との差は10秒以上はつけたかった。その点は情けないのですが、23分45秒というタイム自体には納得しています」
 3区は5回目の出場で、自身が持つ区間記録(23分26秒)に次いで2番目の記録。
「(前を追うということでは)中盤から気持ち的に苦しくなりましたが、区間賞だけは取っておきたかった。見えない学生選手をイメージして頑張りました」
 学生選手に箱根駅伝があったように、大森は12月にアジア大会があった。そして、今年の一番の目標は、カージナル招待での1万m日本新記録だという。その狭間でしっかりと結果を残したのは、実業団選手の意地だったのか。

●7区編
区間賞は飛松、九州の実業団選手が1〜3位
しかし、学生選手も健闘


 7区は兵庫(北村聡・日体大3年)が独走し、2位も長野(佐藤悠基・東海大2年)が抜け出て単独走をしていた。混戦だったのは3位争い。テレビ画面から全ての展開がわかったわけではないが、前半は8チームが4位争いをしていた。その集団が大分を抜き去った後のある局面では5人。長崎(阿部祐樹・三菱重工長崎)、熊本(徳永考志・同)、福岡(植木大道・トヨタ自動車九州)、宮城(保科光作・日体大4年)、群馬(高橋憲昭・SUBARU)という面々。保科が引っ張っていたが、行ききれずに下がったりすると、植木が前に出たりしていた。
 このうちの3人が区間2〜4位を占め、1・2位でフィニッシュした北村と佐藤を上回ったのだから、牽制していたわけではない。競り合いながら前を追っていた。と、客観的に見れば言えるのだが、植木はそれほど速いとは感じていなかった。
「(タスキを受けた)10位は予定外ですが、前を拾っていくだけでした。前にいた集団に入って、後は落ち着いて行けたと思います。去年も3人の集団で進みましたが、何度も微妙にスパートしていたら最後に余裕がなくなっていた。その教訓で、今日はペースが遅いと感じても我慢していきました。それにもかかわらず、今日もラストでやられてしまった。粘れなかったのが反省点です」

 その集団のトップを取ったのが、飛松誠(佐賀・安川電機)だった。約20秒先に出た集団に10km手前で追いついただけでなく、最後の競り合いをも制した。その結果が、37分48秒で区間賞。阿部に11秒勝った。
「全国規模の大会の区間賞は初めて。集団も速かったのでなかなか追いつけず、苦しいかな、とも感じていました。5kmはタイムを見る余裕がまったくなかった。10km通過は29分14〜15秒でした。有名な学生選手が多かったので、負けられないと思っていました。今井(正人・福島・順大4年)君は走る前から注目を浴びていたし、今年は同じ九州の実業団選手になる。負けたくない気持ちは強かったですね。(自分も経験した)箱根の5区では“山の神”ですから勝てませんが、九州実業団駅伝には上りの区間もある。そこで勝負をしたい」
 今井がトヨタ自動車九州に入るから頑張った、というわけではないだろうが、飛松、阿部、植木が区間1〜3位を占め、4位が今井と保科だった。

 しかし、学生選手たちも決して、悪い走りではなかった。保科は前述のように、実業団選手たちとの集団を積極的に引っ張ったし、今井は38位から21位へと順位を引き上げた。17人抜きである。北村は区間6位(38分11秒)だったが、トップを独走していただけにやむを得ない。区間11位(38分27秒)の佐藤の評価は難しいが、北村を追うためにハイペースで入ったのは事実である。
 佐藤は「最初からできる限り行きました。最初の1kmをかなり速く入ったので、結構早い段階できつくなってしまった。それで、後半の走りが浮いてしまいました」と、冷静さを保ちながら話したが、出場を予定している丸亀ハーフマラソンの目標を聞かれると「1時間1分台が目標ですが、今は走れる気がしません」と、トーンダウンしてしまった。
 その一方、今井は今回の結果を冷静に受け止めている。
「(実業団選手との対決は)あまり意識せず、胸を借りるつもりで行きました。区間4位になれたのは、思った以上の結果です。(箱根駅伝の後という時期で)自分の状態がわからないなか、よく走れたとは思います。ただ、4月から同僚になる植木君(2人は同学年)に3秒負けたのは、実業団で努力をしている彼と、今の自分との力の差です」
 4月からはもう、実業団で勝負をしていかなくてはいけない。実業団で、と言うよりも、世界に出て勝負をしていかないといけない立場になる。


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