2006/6/30 日本選手権
1日目ダイジェスト

予選&準決勝雑感
注目される男子200 mの末續・高平対決
準決勝で先着を許した成迫&丹野
女子100 m予選・準決勝ではっきり出た高橋萌木子の特徴


●男子200 m
 末續慎吾(ミズノ)が200 mで久しぶりに強さを見せている。予選、準決勝ともコーナーワークで後続を圧倒。準決勝も最後の50mは力を抜いたが、20秒69(−0.2)で予選・準決勝を通じてトップ。決勝の20秒台前半は確実だろう。条件に恵まれれば、20秒1台後半も。
 高平慎士(順大)も予選・準決勝と、カーブの後半で2位以下を圧倒。2組あった準決勝は、末續の1組が吉野達郎(ミズノ)、大前祐介(富士通)、松田亮(広島経大ク)と実業団選手が揃ったのに対し、2組は高平、塚原直貴(東海大)、長谷川充(筑波大)と「インカレ組」(高平)だった。そのこともあって後半の流し方が楽だったようで、タイムは20秒92(+0.4)。末續との直接対決は昨年5月の静岡国際以来だが(それ以降は日本選手間で無敗)、「これまでで一番楽しみ」と感触はいい。日本インカレで痛めた左足甲の痛みは問題ないという。
「決勝は最初からどんどん行く。何位になっても良い」と言う高平。どんなレース展開になるか予測が難しいが、前半50mで末續が大きくリードするようだと、優位な展開に持ち込める。50〜100 mで高平が前に出るようだと、末續も久しぶりに日本選手の背中を見る。慌てるかどうかはわからないが。

 吉野達郎(ミズノ)が予選・準決勝とも末續と同じ組になったことで目立たなかったが、調子は悪くなさそう。東日本実業団の際に「末續さんが出たら2位が目標」と話したのは、一緒に練習している末續の強さは肌で感じているが、高平には負けたくないとの思いもあってのこと。“予選・準決勝・決勝オール2位”を狙ってくるだろう。
 塚原は準決勝2組で高平に0.09秒差。ただ、もう少し力の差はあったように感じた。「コーナーを抜けるところでちょっとふらついてしまった」と本人。決勝は日本インカレのように前半から突っ込む走りはしないと言う。高平とは若干違う部分だが、それがどう表れるか。
 大前も準決勝まではやや抑えた印象を受けた。決勝では全開で来るはず。予想される「東海大3人+高平」の構図に割って入れるかどうか。

●男子400 mH
 男子400 mHで意外だったのは、予選・準決勝を通して50秒を誰も切らなかったこと。例年ではあり得ないことだが、準決勝が入って3ラウンドになり、着順(5組3着+1と2組4着)で進めるためだろうか。準決勝2組では成迫健児(筑波大)が50秒62で2位。筑波大の先輩にあたる50秒51の河北尚広(石丸製麺)に先着を許した。成迫が為末以外に先着されたのは、決勝前のラウンドとはいえ、ちょっと記憶がない。
「試合が多く、ここに来て疲れも出ている。ポイントを押さえないと、前に進まない。6割くらいの力でも、ゴールしてからがきつい」と、やや不安を感じさせるコメント。しかし、「去年悔しい思いをした。今年こそ負けられない大会」と意気込みは大きい。

●女子400 m
 準決勝で丹野麻美(福島大)が、これも大学の先輩にあたる竹内昌子(秋田ゼロックス)に先着を許した。54秒06と54秒12。レースを見られなかったので、最後にどのくらい流したのかは見ていないが、先着を許したのはいつ以来だろうか。昨年の予選で丹野は52秒台。これも、準決勝(2組4着どり)が加わったためと思われる。
 竹内は自己記録を3年ぶりに0.50秒更新。今季は800 mでも自己新。絶好調である。1学年後輩の久保倉里美(新潟アルビレックスRC)、木田真有(北海道ハイテクAC)に押されていたが、今回は2位争いを面白くしてくれそうだ。
 久保倉は400 mHを含めて3本走る日ということで全てを抑え気味に走った印象。木田は予選を見る限り、好調と感じられた。

●女子100 m
 信岡沙希重(ミズノ)が予選は強敵不在の組で圧勝。準決勝は北風沙織(浅井学園大)、高橋萌木子(埼玉栄高)、小島初佳(ピップフジモト)、松本真理子(福島大TC)と強豪揃いの組となり、加えて、1回目に自身がフライング。スタートで出遅れて、後半に力を入れて、リードした北風を逆転。11秒74(−0.8)。
 北風は11秒78。「後半もリラックスでき、向かい風でも走れたことが収穫。スタートは大丈夫だと思うので、決勝は後半を落ちないようにしたい」

 高橋萌木子のラウンド制の試合を初めて見た。「気持ちの盛り上がりがレースにそのまま出る」と、北関東インターハイのときに清田浩伸先生から聞いていたが、まさにその通りの展開に。
 予選は「えっ?」と思うくらいにスタートで大きく出遅れ、後半にエンジンの回転数を上げて2位(12秒08。1位は長島夏子で11秒93)。準決勝は対等なスタートとは言えないまでも頑張り、11秒82で信岡、北風に続いて3位。
「準決勝は決勝くらいの気持ちで行きました。それでも、明日の決勝はたぶん、準決勝とは違う走りになると思います」

 準決勝2組は石田智子(長谷川体育施設)、長島、藤巻理奈(富士通)の順で11秒79(+0.3)、11秒80、11秒89。石田がきっちりと仕上げてきた印象で、長島も日本インカレで乗った上向きの状態を維持している感じ。藤巻は故障の影響から完全に脱していない印象。

●女子100 mH
 池田久美子(スズキ)が出場していないと、石野真美(長谷川体育施設)の動きが完全に他を圧している。面白くなりそうなのが2位争い。予選1組で佐藤由紀(福岡大)が日本インカレ優勝の金子沙織(筑波大)に0.17秒も先着。2組トップの熊谷史子(福島大)が13秒76と石野に次ぐタイム。2組だけが+1.9mと追い風だった。

●女子400 mH
 1組は吉田真希子(ナチュリル)、2組は青木沙弥佳(福島大)、3組は久保倉里美(新潟アルビレックスRC)、4組は宮原綾(筑波大)がトップ。タイムは59秒39、60秒73、61秒40、62秒14。吉田が他を大きく離している。青木と久保倉が400 mを2本走ったのに対し、吉田は400 mHだけ。という部分はあるが、男子400 mHで50秒、女子400 mで54秒が切れなかったことを考えると、吉田のタイムはかなり良い。


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