2004/6/3 日本選手権前もの
大会2日目Preview

■全体編
 “AB対決”が多い一日となる。
 男子の200 m、1万m、400 mH、三段跳はA標準突破者が1人ずつで、なおかつB標準突破者もいる。A標準選手が敗れたらその場での代表内定はなくなり、1週間後の陸連決定を待たなければならない。もっとひっ迫しているのがB標準選手。勝たなければ全てが終わってしまうのだ。
 男子200 mは末續欠場の結果、A標準選手が宮崎久(ビケンテクノ)1人だけとなったが、今季は調子が上がらずに苦しんでいる。1万mは直前の新潟で大森輝和(くろしお通信)がA標準を突破したが、優勝候補は五指に余る。三段跳の杉林孝法(ミキハウス)も、“ケガの予兆”で試合に出ていない。A標準で余裕のあるのは400 mHの為末大(APF)だけだが、一歩間違ったらどうなるかわからない。

 “BB対決”も、1人しか出られないのは同じ。女子走幅跳で花岡麻帆(Office24)と池田久美子(スズキ)、女子砲丸投で森千夏(スズキ)と豊永陽子(徳島陸協)のそれぞれ2選手が激突する。“AB対決”も同じだが、2人揃ってA標準を突破すれば、2人とも出られる可能性はある。ただ、その場合も2位の選手は他種目との比較になるので、やはり勝つことは重要だ。

 混成種目は男女ともB標準突破者が1人。代表派遣となればともに、地元開催だった東京オリンピック以来40年ぶりの快挙となる。
 男子の1500m、男子の円盤投はともに標準記録突破者ゼロの種目。奇しくも、トラックとフィールドで最古の日本記録が残る種目だ。選手たちの奮起を期待したい。
 この日は連勝の話題も多い。3日目の男子ハンマー投の室伏広治(ミズノ)や、この日の男子円盤投の畑山茂雄(ゼンリン)の連勝は固いが、どう転ぶかわからないのが女子100 m。小島初佳(ピップフジモト)の7連勝がなるかどうか。

 ところで、今大会の跳躍種目で旋風を起こすかもしれないのが東海大勢だろう。大会初日の走高跳でも江戸祥彦と比留間修吾の名前を挙げたが、2日目の三段跳でも井上大資と稲葉広幸が好調。稲葉が日大対東海大戦で16m00を跳べば、関東インカレでは井上が16m33で優勝(2位が稲葉)。それも向かい風0.5m。走幅跳でも斎藤直樹が7m76で関東インカレで1位と1cm差の2位。
 たぶん、跳躍ブロック全体として雰囲気が盛り上がり、この冬はいいトレーニングが積めたのではないか。なんとなく旋風を巻き起こしそうな気がする。結果的に実業団勢の壁は厚かった、という結果になるかもしれないが、いずれにしても注目すべき存在だろう。

全種目展望

■男子200 m
A標準20秒59
20秒03 末續慎吾(ミズノ)
20秒53 宮崎 久(ビケンテクノ)
B標準20秒75
20秒60 大前祐介(早大)
20秒62 松田 亮(広島経大)
20秒63 高平慎士(順大)
20秒67 吉野達郎(東海大)
20秒71 新井智之(筑波大)
20秒72 伊藤辰哉(富士通)
20秒74 川畑伸吾(群馬綜合ガードシステム)

 末續慎吾(ミズノ)の欠場により、A標準を突破すれば優勝(=内定)の可能性が出てきた。静岡国際で追い風2.2mながら20秒52で優勝した大前祐介(早大)が独走の気配だが、誰かがストップをかけそうな気もする。
 その一番手に挙げられるはずなのが宮崎久(ビケンテクノ)で、昨年、A標準を突破している。末續を除けばただ1人ということになる。と言っても、ちょうど1年前の日本選手権のこと。実績で代表になろうとは、本人も思っていないはず。というのも、宮崎の調子が落ち込んでいるからだ。東日本実業団で土江寛裕(富士通)に敗れた後、「直線になると硬さが出てしまう」と今年の不振の原因を語っていた。
短距離公開練習&合同取材 宮崎他」の記事に書いたように、練習方法と動きを変更した宮崎。その成果が出ていないのだ。日本選手権までにどう修正してくるか。昨年も日本選手権前はイマイチだったが、本番にきっちり合わせてきた実績もある。それも、実績にすぎないが…。
 吉野達郎(東海大)も関東インカレでは大前に敗れている。「関東IC 山口の収穫」」で書いたように、東海大の五輪候補は同インカレに合わせていない。その上乗せ分が、どのくらいああるか。
 昨秋絶好調で、室内でもそれなりの仕上がりを見せていた高平慎士(順大)が、今季はやや調子を下げている。屋外シーズンになって話を聞いていないので原因は不明。一時は、リレーメンバー入り当確とも言える勢いだった。その勢いが甦れば、2位以内に食い込みそうだ。目立たない確実に上位にいる松田亮が、昨年は2位から7位が0.08秒差という熾烈な2位争いを制した。ちなみに、下に名前を挙げた9選手のうち、高橋和裕と中川の2人を除く7人が、昨年の決勝に残ったメンバーだ。
◎優勝者予想
大前祐介
○ほとんど優勝候補
宮崎 久
吉野達郎
▽有力候補
伊藤辰哉
松田 亮
高平慎士
高橋和裕
中川博文
新井智之
※回復次第


■男子1500m
A標準3分36秒20
B標準3分38秒00

 小林史和(NTN)が中部実業団で足馴らしをし、ゴールデンゲームズに優勝。3分44秒40のタイムよりも、2位の元田幸祐(旭化成)との0.18秒差をどう評価するか、だ。元田が日本のトップを争う力が付いたと判断するか、小林がまだまだ回復していないと判断するか。両方の要素があった結果だと思うので、日本選手権までに調子が上がると判断し、優勝者予想は小林とした。
 だが、それは冬期に若干の練習中断期間があった辻隼(ヤクルト)にも言えること。静岡国際では田子康宏(立命大)に敗れたが、日本選手権までの1カ月で調子を上げてくるだろう。とすれば、最近のラストの切れでは辻が一番なだけに、2連勝の確率は高い。200 m以上の距離からスパートするのが小林で、それを辻がラストの直線でとらえられるかどうか。
 静岡を制した田子は最初から独走に持ち込むか、ロングスパートに出るだろう。田子は鳥取出身。地元の声援を背に、レースを“動かす”選手となりそうだ。
 未知数なのは元田。ゴールデンゲームズも実は序の口で、日本選手権で一気にブレイクということも、あり得ない話ではない。
◎優勝者予想
小林史和
○ほとんど優勝候補
辻  隼
田子康宏
▽有力候補
井幡 磨
元田幸祐
※回復次第


■男子1万m
A標準27分49秒00
27分43秒94 大森輝和(くろしお通信)
B標準28分06秒00
27分50秒97 松宮隆行(コニカミノルタ)
27分53秒95 大島健太(くろしお通信)
27分54秒42 細川道隆(大塚製薬)
27分58秒98 坪田智夫(コニカミノルタ)
28分00秒23 三津谷 祐(トヨタ九州)
28分02秒11 佐藤敦之(中国電力)
28分03秒62 高岡寿成(カネボウ)
28分03秒92 尾田賢典(トヨタ自動車)
28分05秒38 国近友昭(エスビー食品)
28分05秒76 尾方 剛(中国電力)

 “ほとんど優勝候補”が11人と全種目中最多。本当に誰が勝つかわからない。日本選手権前にA標準を切ったのが1人だけ、そして気象条件。この2つがレース展開にどう作用するか。難しい部分だが、予想するのが面白い部分でもある。
 5月22日に新潟でA標準を突破した大森輝和(くろしお通信)以外の選手にとっては、A標準を切って3位以内というのが、安全な代表の決め方(2位以内が必要か?)。1人でもハイペースで押していける坪田智夫(コニカミノルタ)や佐藤敦之(中国電力)、上岡宏次(日産自動車)らは、A標準を狙って前半から積極的に行く可能性がある。その戦法が勝利にもつながるだろう。
 しかし、気温が高くなったら、さすがに前半からは飛ばせない。となると、中盤で誰かが揺さぶりに出る展開になる。松宮隆行(コニカミノルタ)、岩佐敏弘(大塚製薬)、尾方剛(中国電力)、大島健太(くろしお通信)あたりがその候補。松宮は中盤よりも、終盤でのロングスパートか。
 新潟の1万mに出なかった徳本一善(日清食品)やカネボウ勢は、元々、日本選手権に勝って、記録は後から狙う方針だった。徳本、瀬戸智弘(カネボウ)あたりはラスト1周の勝負に賭けてくるだろう。同じくラストに強い三津谷祐(トヨタ自動車九州)は、新潟で5000mも行かないうちに後退し、本人も首を傾げる状態で、ちょっと気になるところ。
 優勝者予想をA標準の大森としなかったのは、空腹ではなかったから、というオチではなく、レース展開的に大島が有利なのではないかと思ったから。一定ペースで記録を狙うレースでなく、勝負優先の駆け引きが激しいレースになりそうな気がするので、ペース変化に強い大島かなと。
◎優勝者予想
大島健太
○ほとんど優勝候補
瀬戸智弘
高岡寿成
大森輝和
細川道隆
松宮隆行
岩佐敏弘
坪田智夫
徳本一善
三津谷 祐
佐藤敦之
尾方 剛
▽有力候補
国近友昭
太田 崇
上岡宏次
※回復次第


■男子400 mH
A標準49秒20
48秒87 為末 大(APF・TC)
B標準49秒50
49秒23 千葉佳裕(富士通)
49秒37 吉形政衡(福岡大)
49秒44 成迫健児(筑波大)

 国際グランプリ大阪のときのコメント国際GP大阪 為末が外国勢に快勝から、為末がかなりいい状態なのがわかる。47秒台を期待するのはもうちょっと後にとっておいて、今回は48秒47の国内自己最高(国内日本人最高は山崎一彦の48秒23)を更新してくれたら、という第三者の勝手な希望である。
 成迫健児(筑波大)が関東インカレでB標準を突破したが、A標準突破者はいぜんとして為末大(APF)ただ1人。だが、1万mと違って、順位を取れば一緒に記録も出せる種目。3位以内……2位以内に入れば、A標準は結果的に突破しているだろう。
 吉沢賢、千葉佳裕の順大OBコンビが今季、調子が上がっていない。先行する吉形を、河村英昭が逆転できるかどうか、が見どころになりそう。
◎優勝者予想
為末 大
○ほとんど優勝候補
河村英昭
吉形政衡
▽有力候補
千葉佳裕
吉沢 賢
成迫健児
※回復次第


■男子三段跳
A標準16m95
16m96 杉林孝法(ミキハウス)
B標準16m55
16m84 石川和義(筑波大)
16m65 小松隆志(高知陸協)

 潜在能力では日本記録(17m15)以上と言われている杉林孝法(ミキハウス)と、抜群の安定度と国際舞台での強さを誇る石川和義(筑波大)。同じ村木征人門下とはいえ、今大会屈指の対決と注目されていた。が、両者ともまず、故障との闘いが先になってしまった。
 杉林は織田記念のトライアルでケガの予兆を感じて欠場、石川は関東インカレを欠場した。ただ、2人とも深刻な故障とは聞いていない。日本選手権を最優先に考えた結果の欠場だろう。ともに試合に出なくても調子を上げられる選手。心配は要らない(と思いたい)。
 展開としては、石川が先行し、後半に強い杉林が追い上げると面白くなるが、杉林としては国際大会で予選を突破するためにも、前半の3回で勝負をつけたいところ。
 注目は36歳の小松隆志。近年は本当に試合を絞って出場し、それでも日本のトップレベルを維持している。昨年は日本選手権で16m60(2位)、アフロ・アジア大会で16m65(1位)と、2試合ではあるが驚異的なアベレージを残した。“有力候補”ではなく、ほとんど優勝候補に変更をしたい。
 東海大勢に関しては、2日目全体部分のPreviewを参照。
◎優勝者予想
石川和義
○ほとんど優勝候補
小松隆志
井上大資
▽有力候補
※回復次第
杉林孝法
渡辺容史


■男子円盤投
A標準64m00
B標準62m55

 畑山茂雄(ゼンリン)が今年優勝すれば6年連続7回目となり、連勝記録で東京五輪代表の金子宗平を抜いて単独1位、優勝回数でも日本記録(60m22)保持者の川崎清貴を抜いて単独1位になる。
 2人の偉大な先輩を抜くことになるが、当事者である選手の気持ちは客観的な評価とは異なるだろう。畑山にすれば、今の円盤投界の状況では勝って当たり前。連勝と優勝回数で先人を抜いた抜かないよりも、60mを投げることが目下の最大関心事。
 見ている側も、畑山が勝つのは当然と思っている。興味があるのはやはり、畑山の記録だろう。
◎優勝者予想
畑山茂雄
○ほとんど優勝候補
なし
▽有力候補
佐々木大志
小林志郎
保田 豪
※回復次第


■男子十種競技
A標準8000点
B標準7700点
7719点 石沢雅俊(小島プレス)

 日本選抜混成東京大会で石沢が7719点の日本歴代3位。2年ぶりの優勝に近づいた。昨年の優勝者の平田卓朗(八潮市陸協)は4月第1週の試合で軽い故障をして、東京大会は大事をとったが、3月までは順調で7800点台の期待を関係者からかけられていたほど。
 中部実業団で石沢が単独種目に出たりしている(雨の中で棒高跳4m40、110 mH14秒48は自己新ではないが好記録)が、東京大会以後、混成競技の大きな試合がないので、状況に変化はない。
 投てき種目で平田が少しずつ上回り、最後の1500mで石沢が一気に挽回するパターンが予想され、白熱した展開が期待できそうだ。2人の争いから再度B標準を大きく破れば、地元開催だった東京五輪以来のオリンピック代表派遣も可能性が出てくる。
◎優勝者予想
石沢雅俊
○ほとんど優勝候補
なし
▽有力候補
田中 宏昌
飯田敦彦
※回復次第
平田卓朗


■女子100 m
A標準11秒30
B標準11秒40

 小島初佳(ピップフジモト)が日本選手権で負けないのは何故だろう。昨年、春季サーキットまでは不調だった彼女が、日本選手権で2冠(ともに6連勝)となったとき、そう感じたファンは多いはずだ。200 mはともかく、100 mで坂上香織(ミキハウス)との力の差は、それほどあるわけではない。
 しかし、円盤投の畑山と同様、選手の関心は“結果として”記録となる連勝よりも、目前の課題に集中する。小島であれば100 mでの標準記録突破がそれ。昨年も強調していたように、勝ち負けがどうこうより、とにかく記録が欲しいという状況なのだ。
 とはいえ、100 mの場合、見ている側はレース途中に「この選手は今、11秒3のペースで走っている」とわかるわけではない。勝敗に注目するのは当然である。スタートで飛び出す坂上を、小島がどこでとらえるか。あるいは、水戸国際のように坂上がそのまま逃げ切るか。
 この2人にだけ注目していればいい、というわけでもない。石田智子(長谷川体育施設)と鈴木亜弓(スズキ)の4×100 mR日本記録メンバーの2人も、先輩との差を確実に縮めているし、瀬戸口渚もときおり“おっ”と思わせる走りを見せる(今に始まったことではないが)。静岡国際の200 mで日本歴代2位をマークした信岡沙希重(ミズノ)も、MTCサイトの記事によれば100 mでの日本記録は、200 mで国際レベルに到達するために必要な要素と考えている。
 各選手は小島の連勝を止めるために走るわけではないが、結果として小島包囲網は確実に厳しくなっている。
◎優勝者予想
小島初佳
○ほとんど優勝候補
坂上香織
▽有力候補
鈴木亜弓
石田智子
信岡沙希重
瀬戸口 渚
※回復次第


■女子400 m
A標準51秒50
B標準52秒30

 今季の実績では福島大ルーキーの丹野麻美がリードしている。織田記念では木田真有(福島大)と吉田真希子(FSGカレッジリーグ)を抑え、東北インカレでは木田に勝って優勝した。しかし、今季は世界ジュニアを狙う選手が早めの仕上がりをしたのに対し、福島大の上級生はかなり追い込んだトレーニングを行なったようだ。できれば、4〜5月でもう少し記録を上げたかったところだが、上級生たちの調子が上がるのはこれからだろう。
 川本和久監督も自身のサイトで「木田がむちゃくちゃ走れています。52秒台がでてもおかしくないできです。他の400ランナーもいいのですが、木田の出来に霞んでいます」と情報を公開している。
 しかし、吉田が400 mに出るかどうかは不明。400 mHに絞ってA標準を狙うか、“いつも”のように、先に行われる400 mにも出るか。
「川本は吉田のフォーム矯正にかかりっきり。感覚のズレを修正する作業なので、付きっきりでないとダメ。いい感じで修正完了。これで、日本選手権は、予選・決勝とも狙っていけそうです」
 と、これもWEBサイトに書かれているが、種目に関しては言及がない。
 個人的には久保倉里美(福島大)も、相当に行けるのではないかと思っている。
◎優勝者予想
木田真有
○ほとんど優勝候補
吉田真希子
丹野麻美
▽有力候補
久保倉里美
湯野真由美
※回復次第
柿沼和恵


■女子1500m
4分05秒80
4分07秒15

 今季リスト1位の杉森は800 mに専念。兵庫リレーカーニバルでは31歳の早狩実紀(京都光華AC)が日本人トップだったが、水戸国際では終盤に失速。水戸で優勝した佐藤由美(資生堂)はエントリーせず、期待の桑城奈苗(筑波大)も冬期に故障があったとかで、今季は不調。本命不在の状態だ。
 そうなると昨年の優勝者、杉原加代(パナソニックモバイル)が浮上してくる。今年は5000mでの出場を目指したが参加標準記録に届かず、再度、1500mで挑戦する。昨年も、1500m用の練習は直前の2週間だけだった。最後のスピードがある選手だけに、混戦となると昨年の再現の可能性も十分。
 吉野恵(京セラ)、湯田友美(ワコール)、高浪由希(九電工)ら今年19〜20歳の若手にもチャンスがある。
 日本記録保持者の田村育子(グローバリー)が関西実業団でレースに復帰。4分23秒07で日本選手権参加資格を得て、早狩実紀(京都光華AC)にも2.04秒差をつけて優勝した。しかし、まだ完全復調という段階ではない。かつて連勝していた頃のように、優勝間違いなしとまでは言い切れない。
◎優勝者予想
杉原加代
○ほとんど優勝候補
桑城奈苗
早狩実紀
田村育子
▽有力候補
吉野 恵
湯田友美
宗 由香利
※回復次第


■女子走幅跳
A標準6m70
B標準6m55
6m68 花岡麻帆(Office24)
6m65 池田久美子(スズキ)

 池田が静岡国際、国際グランプリ大阪と花岡に2連勝しているが、両者の差は13cmから8cmに縮まっている。とはいえ、これも選手の関心事は、記録が縮まってきているとかどうとか、関係ない。自身の力をより発揮することが、記録や相手との差となって現れる。
 池田だったら最後の4歩のさばきが上手くいけば、6m70どころか日本記録(6m82)まで行く感触を持てている。花岡に関しては今季、直接話を聞けていないが、越川コーチによれば“走り方”を変更したという。「地面からしっかりと力をもらうことのできる動きで、それは型にはまってきている」と言い、その結果が11秒72(+1.6)と記録にも出ている。ただ、跳躍練習をするとアキレス腱の上部に痛みが出てしまうこともあるという。
 桝見咲智子が現在の状態では、青山幸が台頭する以前の女子走高跳のように、2強以外の選手が優勝することは考えられない。
◎優勝者予想
池田久美子
○ほとんど優勝候補
花岡麻帆
▽有力候補
桝見咲智子
町田由美子
※回復次第


■女子砲丸投
A標準18m55
B標準17m15
18m22 森 千夏(スズキ)
17m28 豊永陽子(徳島陸協)

 難しい競技である。ちょっとした心の乱れが、大きな記録になって現れてしまうのだから。4月に18m22と日本人初の18m台で、A標準にも33cmと迫った森。静岡国際でも17m70で日本人1位と、ライバルの豊永に73cmの大差をつけた。
 ところが、その5日後の大阪GPでは豊永が3回目に17m10、6回目に17m14を投げたのに対し、森は2投目の16m34でベスト8漏れ。自己記録に1m88差があった。「外国選手と勝負をしたい意識が強すぎて、腕が早く出てしまった」というのが、失敗の自己分析。昨秋の地元・静岡国体でも同様に17m28を投げた豊永に敗れているし、日本選手権でもかつて同じことがあった。
 それだけ、微妙なバランスの上で初めて、大きな力が発揮できているということだろう。これまでの日本の砲丸投選手にはあまりなかったことだが、自己記録から1〜2mショートするのは、世界のトップ選手にはよくあること。日本の女子砲丸投が、国際レベルになってきたことの裏返しと言えなくもない。
◎優勝者予想
○ほとんど優勝候補
▽有力候補
※回復次第


■女子七種競技
A標準6050点
B標準5900点
5910点 中田有紀(栄クリニック)

 5月1・2日の日本選抜混成東京大会の中田は、5597点と自己8番目の記録。3種目の砲丸投までは良かったが、200 mから少しずつ崩れていった。2位の佐藤さよ子(日立インダストリー)も5495点と今ひとつ。とはいえ、ジュニア日本記録を持つ笠原瑞世(同大)の欠場するとあっては、この2人の争いになるのは間違いない。2人とも東京大会は小手調べで、日本選手権に合わせていると思われる。
 中田は中部実業団で100 mHと走幅跳んび出場。14秒33と5m83で記録的にはよくないが、練習期間で一度、試合の動きをしておこうという意図だったのだろう。
 中田は昨年の日本選手権優勝時に、5910点と自己の日本記録を更新。2年連続日本新とれば、6050点のA標準に届く可能性も。そうなれば十種競技同様、東京五輪以来の代表派遣となる。
◎優勝者予想
中田有紀
○ほとんど優勝候補
佐藤さよ子
▽有力候補
※回復次第



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