2003/5/16 関東インカレ
男子400 mは東海大勢が失速
高野コーチの分析を紹介
法大・
伊藤が逆転V
世界選手権代表にも意欲

 男子400 mは4月に45秒78の世界選手権B標準を突破した冨樫英雄(4年)を筆頭に、今季日本2位のタイムを持つ山口有希(2年)、46秒64の中沢裕二(3年)と強力トリオを揃えた東海大勢の圧倒的優位が予想されていた。確かに、3人が記録を出した日大・東海大戦はコンディションに恵まれすぎていたが、その後の春季サーキットでも冨樫・山口は織田記念で1・2位・冨樫は水戸でもA組3位(全体で5位)と、記録がフロックでないことを見せていたのである。

 ところが、昨年の日本インカレ優勝者の山口が、予選のコールに遅れる失態を演じ、「空気が重たくなった」(高野進コーチ)。そして迎えた決勝では、冨樫の前半が重かった。200 mの通過は22秒8。バックストレートが向かい風ではあったが、織田記念や水戸国際に比べたら相当に弱い向かい風。「キレが悪かったですね。22秒1〜2くらいで通過してほしかった」と高野コーチ。
 代わって、高野コーチから積極的に行くよう指示されていた中沢が飛ばしていた。200 mの通過タイムはわからないが、22秒少しだったはず。だが、結果的には「行き過ぎた」(高野コーチ)ようだ。
 5レーンの中沢が5m前後(距離差、ちょっと自信なし)のリードで最後の直線に入ると、7レーンの冨樫と6レーンの南雅也(順大)が追い上げる。中沢がなんとか逃げ切るかと見えたところに、内側の4レーンから伊藤友広(法大3年)が突っ込んできて、僅かに逆転した。リプレイを見ると残り50mまでは伊藤は冨樫よりも後ろにいた。すさまじい追い込みだったわけである。

 だが、記録は優勝した伊藤が47秒13で以下、中沢47秒14、冨樫47秒18、間嶋陽一郎(城西大)47秒23、南47秒38と低調。「2部のタイム(47秒71)とそんなに変わらない。47秒台じゃどうしようもない」と、高野コーチも厳しい評価を下した。とはいえ、致し方ない部分もある。特に冨樫の場合は、関東インカレがすでに今季7試合目。疲労のピークにあるのは確かで、高野コーチはそのあたりを次のように説明する。

「レース、レースでやってくると蓄えがなくなってきます。試合の間の練習は、ハードなものができませんから、つなぎの練習・コンディショニングに終始してしまいます。それは覚悟の上で、インカレは8割くらいの力でなんとかしようと思っていました。そういう状態でも挑戦しようと頑張りましたが、満足できる結果じゃありません。
 うちの選手はほとんどの選手が叩き上げ(大学入学後、特に今年になって強くなったという意味)。いっぱい、いっぱいでやってきているので、ちょっと狂うと厳しくなります。末續(慎吾・ミズノ)みたいに余裕を持てないですね。
 冨樫は先週の大阪グランプリ4×400 mRで45秒4のラップで走っています。そこが、集中力の限界でしたね。単純な肉体疲労じゃないんですよ。神経的にも心理的にも、芯に残る類の疲れです。私も初めて45秒台(1983年7月のユニバーシアード)を出したあと、転戦転戦で世界選手権に臨みましたが、47秒台でした。日本選手権もやっと勝てたレースでしたね」

 となると、心配なのが3週間後の日本選手権。「3週間でどこまで疲労を抜いて、練習を積めるか」ということになるのだが、その部分のコツは部外者にはそう簡単にはわからない部分。昨年も、シニア代表デビュー・シーズンの宮崎久(東海大院)で成功している。サーキット、関東インカレで日本のトップと戦えるレベルにまで持ってきて、日本選手権も200 mで優勝させた。個人差もある部分なので一概には言えないだろうが、高野コーチは自信は持っているはずである。でなければ、7連戦などさせるわけがない。

「私の中ではインカレはステップ、登龍門です。それに、日本のオリンピックに向けての強化を考えたら、ウチだけの問題ではなくなります。もうちょっと400 mのレベルを上げないと…。インカレも大事ですけど、代表を考えてやっていくことですから(東海大の選手を代表にするということと、それによって代表争いを活性化させてレベルを上げること)」

伊藤友広コメント
「予選が200 mの入りが遅くて、決勝は修正していこうと苅部(俊二)コーチと話し合って、決勝に臨みました。しかし、水戸国際で前半行ってラストでタレたことが不安となっていて、結局前半が思い切って行けませんでした。前半が行けていれば、もうちょっとタイムが出ていたと思います。(46秒28の自己ベストで優勝した)昨年の高知国体は、前半から行けていました。1つ外側の邑木(隆二・富士通。法大OB)さんに食らいついて、300mではトップでしたから。(世界選手権は)今の時点ではまだタイムを出していないので、なんとも言えませんけど、狙っていきたいと思っています」

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