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マラソンにおけるオーバーペースとは?
“飛ばし屋”高橋健一に注目

 マラソンではよく「オーバーペース」という用語が使われる。前半を速く走り過ぎて後半失速することだが、それを早い段階で見分けることは、意外と難しい。
 東京マラソンの招待選手の中では、高橋健一がオーバーペースの代名詞ともなっている。近年のマラソンは、5`当たり15分00秒で進むのが常識となっている。それを、2年前の今大会で、前半の20`までを14分35秒〜14分41秒の間でぶっ飛ばしたのだ。7`過ぎからは完全な独走となった。
 超ハイペースのレースとしては、ソウル五輪選考会だった87年12月の福岡国際マラソンが有名だ。中山竹通が独走優勝したのだが、99年東京の高橋は中間点を、その中山のタイムを9秒上回る1時間01分46秒で通過した。だが、そこから急激に減速し始め、30`を過ぎて棄権してしまった。
 87年福岡の中山も、後半は大きく減速したが持ちこたえ、2時間08分18秒と自己の日本最高記録(当時)に3秒と迫った。このとき、中山はオーバーペースとは言われなかった。つまり、オーバーペースになるかどうかは、完全に結果論なのである。
 2年前の高橋の場合、レース中は必ずしもオーバーペースと断定できなかった。東京のコースはスタートから5`強で、約30bも下るからだ。ここを14分30秒台で行っても、決して速過ぎるとは言えないのだ。
 実際、99年東京女子の山口衛里は、高橋を思わせるくらいの飛ばし方をしながら後半も持ちこたえ、日本歴代2位の好タイムをものにした。終盤に上り坂があり、記録が出にくいとかつては言われていた東京のコースだが、前半でリズムに乗ることで必要以上の力を使わなければ、後半も持たせることができる。国内最高タイムは男女とも、東京で出ているのだ。
 高橋のマラソンは、ちょうど2年ぶりとなる。昨年はトラックでシドニー五輪代表を狙っていたこともあり、マラソンには出場しなかった。では今回、高橋が前回同様ぶっ飛ばすのかといえば、それはなさそうだ。「人の後ろで走るとリズムが狂うんです。それに、このペースでも押し通せるのではと思うことも多い」と言う高橋の性格から、絶対にないとは言い切れないが…。
 富士通の木内敏夫監督は「練習では相手が誰でも前に出て、タイムを15分00秒に設定しても14分30秒で行ってしまう。でも、今は集団の中や後ろで走るようになりました。それに、練習で頑張りすぎて疲れが残ることも、後半まで持たない原因だったと思います」と、高橋の変化を説明する。
 2年前は準備期間が不十分で、「行けるところまで飛ばすしかない」(高橋)状況だった。だが、今回は夏場からじっくり走り込んできた。2年前、優勝したゲルト・タイス(南ア)は2時間06分33秒の世界歴代2位(当時)だったが、「そこまで出せる可能性はある」と、高橋は言う。実現すれば、富士通の後輩の藤田敦史が昨年12月に出した、2時間06分51秒の日本最高を破ることになる。
 2時間9分未満が4人と、外国の強豪選手がずらりと揃っているが、普通なら前半は15分かそれを少し切るペースで進むだろう。14分30秒前後で行く選手が現れたら、オーバーペースかもしれないが、それは最後まで見続けなければわからない。日本勢では高橋の他、ニューイヤー駅伝の2区(エース区間)で3位と好走した尾方剛、王国・旭化成のサブテンランナー渡辺共則らが余裕を持ってついていくだろう。箱根駅伝のスター、小林雅幸もそろそろ正念場だ。