2001/10/7
女子マラソン2週連続世界最高記念検証
なぜか、女子の世界最高は独走が多い!!


マラソン世界最高記録と2位とのタイム差
記録 選手 国名 2位選手 2位記録 タイム差 年月日 大会
2.34.47.5 クリスタ・ファーレンジーク 西ドイツ M・アンゲンフォース 2.38.09.4 3分21秒9 1977/10/9 ドイツ選手権
2.32.29.8 グレテ・ワイツ ノルウェー M・クックジー 2.41.49. 9分19秒2 1978/10/22 ニューヨーク
2.27.32.6 グレテ・ワイツ ノルウェー G・アダムス 2.38.32.2 10分59秒6 1979/10/21 ニューヨーク
2.25.41.3 グレテ・ワイツ ノルウェー P・L・カタラノ 2.29.33.6 3分52秒3 1980/10/26 ニューヨーク
2.25.28.7 グレテ・ワイツ ノルウェー M・オコナー 2.28.20. 2分51秒3 1983/4/17 ロンドン
2.22.43. ジョーン・ベノイト アメリカ J・ガロー 2.29.28. 6分45秒 1983/4/18 ボストン
2.21.06. イングリッド・クリスチャンセン ノルウェー S・ローウェル 2.28.06. 7分00秒 1985/4/21 ロンドン
2.20.47. テグラ・ロルーペ ケニア 浅利純子 2.26.11. 5分14秒 1998/4/19 ロッテルダム
2.20.43. テグラ・ロルーペ ケニア M・レンダース 2.23.58. 3分15秒 1999/9/26 ベルリン
2.19.46. 高橋尚子 日本 T・ロルーペ 2.28.03. 8分17秒 2001/9/30 ベルリン
2.18.47. キャサリン・ヌデレバ ケニア E・アレム 2.24.54. 6分07秒 2001/10/7 シカゴ
男子
2.06.50. ベライネ・デンシモ エチオピア A・サラー 2.07.07. 17秒 1988/4/17 ロッテルダム
2.06.05. ロナウド・ダ・コスタ ブラジル J・キプロノ 2.07.27. 1分22秒 1998/9/20 ベルリン
2.05.42. ハリッド・ハヌーシ モロッコ M・タヌイ 2.06.16. 34秒 1999/10/24 シカゴ

 女子の世界最高記録変遷リストを見ていて、ふと気がついた(そんなこと、とっくに気づいていたよ、という読者も多いかもしれないが)。女子マラソンの世界最高記録は、ほとんどが独走で生まれているのである。全部のレースを確認したわけではないが、たぶん間違いないだろう。独走でなかったとしても、2位選手と大差でフィニッシュしているのは事実である。
 最も僅差というケースでも、2分51秒もの差がついているのだ。その点男子は、至近3回の世界最高が誕生したケースを見ても、最大で1分22秒差なのだ。
 レース展開的にも、ダシルバ(ブラジル)こそ中間点付近から独走態勢を築いたが、デンシモ(エチオピア)が2位のサラー(ジブチ)を振り切ったのは40km付近だったし、ハヌーシ(モロッコ、現アメリカ)にいたっては、40km付近で先行するタヌイ(ケニア)を逆転している。独走どころか、40kmまでは勝敗の行方さえわからなかったケースが、3件中2件もあるのである。

 オリンピックのマラソンもどうかと思って調べてみると、女子の方が男子よりも1位と2位のタイム差は大きいし、独走となるケースも多い。

 これは、どう考えたらいいのだろう。
1)今回のシカゴのように、単にライバルとなる選手が出ていなかった
2)今回のベルリンのように、単に2位選手の調子が悪かった
 ということもあるが、これらの現象が生じるのは、女子マラソンの方がまだ、男子に比べて選手層が薄いからではないだろうか。1年ほど前、オリンピックの1位と30位の記録差、世界歴代1位と同30位の記録差を調べたが、いずれも女子の方が大きかった。これらのデータも、女子の方が選手層が薄いことを示している。

 もう1点、推測が成り立つかもしれないことがある。
 上記資料から、男子は競り合いになったときの方が記録が出やすく、女子は独走になったときの方が記録が出やすい、と現時点では言える。世界歴代・日本歴代とも上位の記録は全て、独走で出ているのだ(タイム差が1分30秒以内の日本最高は弘山晴美の2時間22分56秒、世界最高はヌデレバが昨年のシカゴで出した2時間21分33秒。1分未満のタイム差なら弘山に競り勝ったシモンの2時間22分54秒が世界最高)。
 つまり、女子は競り合うよりも、独走となったときの方が、心理的になんらかのプラス作用が働くのではないか、という推論ができるのである。
 だが、いかんせん、女子の場合はまだサンプルが少なすぎる。陸上競技のデータを蓄積したコンピュータにこれらデータを入力して分析させたところ、出てきた答えは“データ不足のため不確定”だった。