2001/7/8
南部記念
有力選手が多数欠場
 第14回南部忠平記念は7月8日、札幌市円山競技場で行われた。正午の気象条件は曇り、気温22.0℃、湿度79%、北北西の風0.2mというコンディション。
 世界選手権の壮行会を兼ねて行われたが、代表選手ら有力選手の欠場が目立った。本番の1カ月前ということで練習の追い込みもピークの選手が多く、無理ができないという事情もある。
 主な欠場選手(と判明している理由)は以下の通り。
 6月末にヨーロッパ遠征を行なった室伏広治(ミズノ)は、世界選手権に向けて投げ込みをしたい、いう狙い。男子100 mの朝原宣治(大阪ガス)、400 mHの為末大(法大)はヨーロッパ遠征中で、海外遠征から帰国したばかりの今井美希(ミズノ)も、最初の高さ1m85を2回失敗すると、そのあとの試技を棄権した。
 男子三段跳の杉林孝法(ミキハウス)は日本選手権で痛めた部位に違和感があり、ここで無理をするよりは、と大事をとった。男子走幅跳の渡辺大輔(ミズノ)もヨーロッパから帰国後に体調を崩して棄権。池田久美子(福島大)も発熱で欠場した。
 男子5000mの永田宏一郎(旭化成)、110 mHの谷川聡(ミズノ)、400 mHの河村英昭(スズキ)、女子5000mの小崎まり(ノーリツ)、野口みずき(グローバリー)も欠場。吉沢賢(デサントTC)は男子400 mHではなく、400 mに出場した。
 世界選手権代表ではないが、日本選手権女子砲丸投で日本新の森千夏(国士大)は、1回目ファウル、2回目から4回目まで連続14m台の後、5投目以降を棄権した。続けても意味がないと判断したのだろう。女子100 mの新井初佳(ピップフジモト)は、予選を2組2位で通過したが、腰を少し痛め、こちらも大事をとった。

男子400 mは代表が全員出場
小坂田が本番を期待させる走り
 欠場者が多く出るなかで、男女の400 mは世界選手権代表選手全員が出場した。
 圧巻だったのは小坂田淳(大阪ガス)だ。4レーンの小坂田は、1つ内側の山村貴彦(日大)を前半からグングン引き離す。山村も決して、前半を抑えるタイプではない。ホームストレートに出てくると、2位以下を大きく引き離していた。これは45秒前後か、と思われたが正式タイムは45秒69。
 ローザンヌGP観戦記にも同様のことを書いたが、山村だけでなく後続選手の動き・記録が今ひとつの中で、小坂田だけがそこそこ動けていた、ということであろう。どの選手も追い込んだ練習をしているのは同じ。その中で2位の田端健児(ミズノ)に0.68秒差をつけたのだから、今季の小坂田の力は日本選手の中では頭ひとつ抜けている。
 200 mもかなり速いタイムだったのではないかと思われたが、小坂田本人は「そんなに出ていないはず」と言う。
「今は本番につながるレースをすることが重要で、合わせる段階じゃありません。それよりも、13日からの合宿の方が緊張します。“ムテキング末續”と一緒にスピード練習をすることになっています。300mくらいのことも、短い距離もあると思います。一緒にやれる範囲でできること、400 mに生かせる動きを獲得しようという意図です。冬は朝原(宣治)さん、夏は末續と、西と東を代表するスピードランナーと一緒に練習させてもらって、結果を出せなかったら申し訳ないです。昔はショートスプリントとロングスプリントは違うと考えていましたが、海外の上の選手を見ると、スピードがないとダメだと痛感しました。自分ではなかなか、スピードを実感できませんが、ビデオを見ると腿上げ(的な走り)から摺り足(的な走り)に変わってきつつあります」
 小坂田を指導する高野進氏(日本陸連男子短距離部長)は、小坂田が400 mランナーとして成熟しつつあると言う。
「今回もうちの大学(東海大)で調整して来ましたが、今日は記録はそれほどでなくてもいい、45秒台が出れば、と思っていました。ランナーとして仕上げの段階に入っていると思います。スタイルがだいぶできあがっていて、練習パターンも含め、定着してきつつあります。400 mの走りは僕のイメージに近づいていて、自分が走っているような感じも受けます(高野氏は44秒78の日本記録保持者)。条件が整えば、44秒台は出ると思います。『いつでも日本記録は抜いていいよ』って言っているんですが」
 小坂田が言及した“摺り足”については、次のように説明してくれた。
「以前は(地面からの)跳ね返りが上に抜ける走りでした。400 mでは上に抜けず、楽に推進力に結びつけることが大切です。最初は『伊東(浩司)さんのようにはいきません』と、自信なさげでしたけど、今は脚の運びはできてきています」
 この夏、小坂田が決勝に進めば世界選手権では、高野コーチが7位になった東京大会以来10年ぶりのファイナリストとなる。