長良川陸上紀行(四)


長良川陸上紀行(一)
長良川陸上紀行(二)
長良川陸上紀行(三)

 ここまで書いてきて、逆なのではないか、と気が付いた。箱根駅伝ファンだけでなく、関東インカレファン、東海インカレファンまで会場に来ていなかったのだ。ここまで徹底してファンが足を運んでくれないのは、これほどのメンバーが中部実業団に出ていることを知らないのではないか、と。悪いのはファンでなく、陸上界の側なのではないか、と。大会関係者は、陸上ファンに来場してもらうための努力をしたのだろうか。
 長良川河川敷には高橋尚子が来て、ファンを動員している。だったら、すぐ隣の競技場まで、高橋に来てもらう段取りをしても、よさそうなものである。高橋はご当地選手で、長良川競技場のトラックには、彼女の汗も染み込んでいる。彼女にとっても思い出深い場所のはず。そして、これだけのメンバーが出ているのだから、高橋見たさに競技場に来た人のうちの何人かが、陸上競技を観戦してその面白さに気づく。その子供が陸上競技選手になる。その内の誰かが高橋に迫る力を付ける。陸上界にとって、好循環となるはずだ(そんなに簡単なことではないだろうが)。

 だったら、前日の国際グランプリ大阪にも来てもらえばいい。大阪学院大出身の高橋にとって、大阪は第2の故郷みたいなもの。会場が昨年の万博記念から、長居陸上競技に移ったせいで、スタンド面積に対する相対的な観客数も減り、閑散とした印象になった。スタンドの比較的小さい、万博記念で続ければいいのに、と、昨年、大阪市関係者に意見を伝えたことがある。その回答は「万博記念競技場は吹田市なんです」の一言だった。
 大阪市でやらなければならないのなら、なおさら、Qちゃんを起用したイベントをやってもよかったはず。金メダル獲得直後は、陸連の意向が働いたのか、国体などに姿を見せたこともあった。なんで最近は、陸上競技の大会に呼ばないのだろうか。市民マラソン的なイベントばかりのような気がする。要するに、陸上競技の大会には、プロを呼ぶ金がないということなのだろう。先行投資をケチってどうするのだろう。

 前日の国際グランプリ大阪と中部実業団に出場したある新人選手は、はっきりと口にした。
「国際大会でもなく、お客さんもいないので、どうしてもモチベーションが落ちてしまいます。ローカルでもインカレだったら応援があったんで、こんな雰囲気の試合は初めてです」
 陸上界にとって観客動員の少なさは、緊急に解決しなければならない問題だと思う。相次ぐ実業団チームの廃部を防ぐには、世間の陸上競技への関心度を高めるのが一番の方法だ。もちろん、筆者なりに具体的な方法も考えている。なんで、関係者はこの方法を実施しないのだろう、と思っているくらいである。でも、それをここで紹介するわけにはいかない。ここで書いても誰も読まないだろうし、誰も読まなければお金にもならない。そんな甘チャンな姿勢ではフリーの陸上競技ライターは務まらないのだ。
 その昔、タクシーの運転手が教えてくれた教訓は忘れていない。


地区インカレ&地区実業団2003特集
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