Stories of CramerJapan
第4回 女子選手が
安心して競技が
できる環境を
盗撮行為&透過撮影の防止、
撲滅への取り組み

 近年、社会問題ともなっている女子スポーツ選手への盗撮、透過撮影行為。体の一部をアップで撮影したり、赤外線を用いた機器で透過撮影をしたりする輩が横行しているのだ。撮影した画像はWEBサイトにアップされたり、DVDビデオなどで売買までされたりしている。日本学連では事態を重く受け止め、女子委員会が中心となって盗撮防止対策を実施してきた。その取り組みと連動して、クレーマージャパンでは透過撮影ができないインナーウエアを開発した。これらの女子競技者を守る活動を、日本インカレ(6月8〜10日:東京・国立競技場)で取材することができた。

@日本インカレでのキャンペーン

目についたポスター
 日本インカレ会場となった国立競技場のそこかしこに、上の写真にあるポスターが貼られていた。写真の右奥はミックスドゾーンと言われ、レース後の選手が報道陣や付き添いの人間と接触できる場所である。日本インカレでは選手が休息したり、着替えをする場所としても使われていた。
 すぐ外側はレストランやスポーツジムに行く通り道でもあり、一般人も自由に行き来ができる。選手たちにカメラを向けることもできてしまうわけである。そこにポスターが貼ってある。大会主催者が、盗撮・透過撮影に対して厳しい姿勢で臨んでいると示すことで、不埒な輩に対して抑止効果がある。
「こういう奴らが後を絶たないのは、本当に嘆かわしい」。筆者がポスターの写真を撮っていると、他の記者たちも異口同音に現状を憂えていた。
 日本インカレでは撮影禁止ゾーンも設けられた。走幅跳・三段跳の真正面や、レース直後の選手にカメラを向けやすいスタンド5カ所を指定。そこには“撮影禁止区域”の貼り紙をして、主催者の意図を明確にアピールした。後述する巡回監視でも、より大きな注意を払うようにした。

女子選手の声
 それにしても、具体的に被害にあった選手はどう対処したらいいのだろうか。ある実業団女子選手は数年前の地区インカレの際、明らかに競技撮影とは別の意図でレンズを自分に向けている人物に遭遇したという。
「非常にショックを受けました。怒りと、憤りを感じました」
 その選手たちは問題の人物を追いかけて問いつめたが、「趣味で撮っている」と言い張られた。どこまで強気に対処していいのかわからず、最後には放免するしかなかった。
「ネット上の写真やDVDなどもそうですが、私たちにはどうすることもできません。怒りをどこにぶつけていいのかもわからない。結局、泣き寝入りするしかないんです」
 明るい性格で取材にはいつも笑顔で対応してくれる選手。普段と違うシリアスな口調からも、問題の大きさが伝わってきた。迷惑防止条例に触れる行為(男性が自身の体の一部を露出するなど)であれば法的措置も可能だが、盗撮・透過撮影に対する具体的な措置は難しいのが現状である。
 日本代表経験も多いあるベテラン女子選手は、次のように話してくれた。
「私たちは試合になれば、もう試合に集中するしかないし、こんなことで勝負に影響されたくないと思っています。ただ、そこにつけこんで盗撮をして、さらにはその画像や映像を商売にしている人がいることに怒りを覚えています。変な人だな、というのは見ればわかるんです。でも、レースに向けて集中力を高めているときや、レース中はどうしようもありません。そういうとき、盗撮防止のアイテムがあれば頼もしく思います」
 選手たちのこういった声を重く受け止めた日本学連は、各メーカーに盗撮・透過撮影防止の製品開発を数年前から打診し始めたのである。

女子選手は盗撮、透過撮影の対象として狙われている(イメージ画像)

巡回監視
 日本インカレでもできる限りの対策を実施した。巡回監視を行う人員を例年よりも増やした。怪しい人物は挙動からだいたいわかるが、見る側の判断は、1人よりも複数が一致した場合の方が確実になる。必ず2人1組となって巡回したという。そして、怪しいと思える人物は服装や髪型などの特徴をメモしておく。そうすると、複数のグループから、同一人物と思える報告があった。
 だが、本当に陸上競技が好きで写真やビデオを撮っている人もいるのである。不用意に疑ってかかったら、人権侵害になりかねない。この問題に関しては、主催者や被害者の権利として何ができるのか、法整備が進んでいないのが現状なのだ。
 だからといって、手をこまねいているわけではない。女子委員会の梶原洋子委員長(文教大)によれば、日本学連ではマニュアルを作成し、次のように対応していると言う。
「怪しい人物に直接話しかけるのは、経験豊富な役員が行います。先方の人権を侵害しないように気をつけた話し方をして、ここは競技場だから遠慮するように警告します。それでいなくなってくれる場合が多いのですが、再度姿を現して同じことをしたら、我々が盗撮・透過撮影撲滅のキャンペーンを行なっていることを説明します。あなたのやっていることは、これに該当しますよ、と訴えるんですね。画像や映像を見せてもらって、その場で消去してもらうこともあります」
 スタンドの不審人物は昨年よりも今年の方が少なくなっているという。学連のキャンペーンの効果が、徐々に表れ始めている。
A透過撮影対策はインナーでにつづく


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